ゴルフでも武道でも達人の域に達する人は、自分の型をもっているように見えるのはナゼだろう。自分に合った型を見つけられれば、上達への道がきっと切り開けるはずだ。そこで廣戸総一氏の提唱する「4スタンス理論」をゴルフに当てはめ、ツアープレーヤーを指導する西野貴治プロに「4スタンス理論」を使ったゴルフ上達のカギを教えてもらおう。
「A1」「A2」「B1」「B2」というタイプ分けをおこなって指導することで知られる「4スタンス理論」。しかしその最新理論は、単なるタイプ分けのレッスンではなく、すべてのタイプの人に共通する「軸」という概念に基づき、効率的でスムーズな体の動きを目指すものとなっている。
茨城県の「ザ・ロイヤルゴルフクラブ」に所属する松田一将プロは、この最新4スタンス理論をベースとした指導を受けてQT上位に入り、今年のレギュラーツアーに参戦している。その松田プロを「ロイヤルゴルフクラブ」内の「廣戸道場」で指導し、自身もプロゴルファーである西野貴治さんに、松田プロへの指導内容をベースに、最新の4スタンス理論について教わった。
4スタンス理論に基づくスウィングの解釈は、一般的にイメージされる「回転」ではなく、「回旋を伴う軸シフト」である。今回からは、その「回旋を伴う軸シフト」によるスウィングを体で覚えるために有効なエクササイズ・トレーニングを教わり、理想的なスウィングの動きを体感し、理解を深めていこう。
その1回目は「ボディツイスト」というエクササイズだ。
「ボディツイストは、その名の通り体を左右にねじるように振る運動。「正しく立つ姿勢」で胴体を左右に動かし、それによって腕が『振られる』動きを左右に連続しておこないます。このときの胴体の動き自体を『回転』だととらえる人はとても多いのですが、ここまで説明してきたことを踏まえれば、竹トンボのような回転ではなく、まさに『回旋と軸のシフト』だということがわかってもらえると思います」(西野さん)
このエクササイズのポイントはあくまで腕は体幹の動きによって“受動的に”振られるという点である。
まずは「トップ・オン・ドーム」で正しく立ち、その状態で体幹を左右に入れ替える動作をおこなう。頭は左右にブレないようにしたいが、固定しようとすると首が硬くなってしまうという人は首周りを柔らかく使うようにしよう。その結果、手は脱力していても体幹に追従して動き、体に巻き付くように振られる。
右回り・左回りの往復スピードができるだけそろうようにして、あまり急加速しないようにまずはゆっくりの動きから始めて、少しずつスピードを上げていこう。体を動かすスピードを上げていくと、腕が振られる円の直径は大きくなり、指先は軸から遠いところを通るようになる。つまり腕に大きな遠心力が生じるわけだ。
「ヘッドスピードを上げるために遠心力を使うということはゴルフのレッスンでよく言われますが、そのために腕やヘッドを大きく振るとか、腕を速く振るというのはあくまでも結果なんです。腕やその先にあるクラブは、遠心力によって振られる部分であり、その遠心力を生むのは軸側の求心力。遠心側の腕ではなく、求心側の体の動きを強くスピーディにする必要があるんです。腕を遠くに振って遠心力を生もうとすると、腕は体に巻き付かなくなります」(西野さん)
ハンマー投げの動きをイメージするとわかりやすいが、遠心力を大きくする=ハンマーの回転速度を上げるには、中心にある体が速く回転しなければならない。ゴルフスウィングでは、この体の回転の代わりに「回旋を伴う軸のシフト」のスピードと強度を上げることが重要になるのだ。
「松田プロには、これを30往復×4セットくらいやらせていますが、アマチュアの方は20往復×3セットくらいから始めてみてください。慣れてきたら、ひざを曲げて腰を落とし、頭ひとつぶん体を下げた状態でやったり、スタンスを広げて寄りゴルフスウィングに近い形でやるなど、応用してみてください。スタンスを広げたときは、体の動きが三角錐のようになるイメージを持つのがポイントですよ」(西野さん)
「僕はこれをやったことで、自分がどれだけがんばって腕を振っていて、それが無駄だったかに気づけました。それに、緊張した場面でも“下が動く”感じが自然と出るようになって、安定感アップにすごく効果がありました」(松田プロ)
「ボディツイスト」を習慣化すれば、体幹主導の動きが末端の指先までしっかり伝達される感覚が身につき、松田プロのような安定感のアップはもちろん、飛距離アップにも大きな効果があるはずだ。