ヘッド容量が大きく、重心距離の長い現代のクラブは、いったんフェースが開くとスクエアに戻りにくく、球のつかまりが悪くなるという性質があります。そのため、近年では、フェースをシャットに(閉じて)使うことで球をつかまえる選手が非常に多くなりました。
グリップはストロング、トップはフラット、フェースをシャットに使って、ハンドファーストにインパクトするというのが、今どきのスウィングの特徴と言えるでしょう。
そういう意味で言うと、今年のマスターズチャンピオンのスコッティ・シェフラーは、その真逆を行く、少数派のスウィングと言えます。
まず、正面から見ると、左手のグリップをかなりウィークに握っているのがわかります。ハーフウェイバックでトウが真上を向き、トップでトウが真下を向いているのは、フェースを開いて上げている証拠です。
トップの高さはPGAツアーのなかでも指折り。このトップから、ややカット目にスウィングすることで、シェフラーは高いフェードを打っているのです。
ただ、ひと昔前のフェードヒッターと違うのは、切り返し直後に、フェースをクローズ方向に使う動きが見られるところでしょう。
現代のクラブは、フェースを開いたままインパクトすると、球のつかまりが非常に悪くなります。だから、切り返しでフェースをクローズに使うことで球のつかまりをよくしているのです。
オープンフェースでフェードを打つというより、軌道をカットにすることでフェードを打つ。それがシェフラーのフェードの精度につながっていると言えそうです。
さて、現代の流行りのスウィングと比べると、非常に個性的なシェフラーですが、その動きのなかにはいくつもの〝曲がらない要素〟を見つけることができます。
たとえば、クラブが右肩に上がって右肩から下りてくるところ。これは、クラブが自然な軌道で動かされている目安と言えます。
また、切り返したときにグリップエンドがボールを指すのは、クラブがプレーンに乗っている証拠。クラブがボールに向かって動こうとしている証拠です。
さらに、切り返したときのシャフトの角度がインパクトまで変わらないのは、シャフトが寝たり、立ったりせず、クラブがプレーンに乗り続けていることを意味しています。
極めつけは、わきが締まり、右ひじが曲がった状態で、手元が低く収まったインパクトです。これは、クラブをリリースすることなく、腰の回転でボールをとらえている証拠です。その結果、体のエネルギーを余すところなくボールに伝えていて、いかにも球が曲がりにくそうな印象を受けます。
現在、世界ランクのトップをいくシェフラー。そのフェードは世界最強にコントロールされたものであることは間違いありません。そんなシェフラーの〝曲がらない要素〟と、自分のスウィングを見比べてみると、今後の練習のテーマが見つかるのではないでしょうか。