子供の頃の夢を叶え14歳にしてPGAツアー挑戦を果たしたのはミッシェル・ウィ。07年地元でおこなわれたソニー・オープン・イン・ハワイに出場し予選通過まであと1打と迫りアーニー・エルスから「スゴい子が現れた。まさに天才少女」と称賛されたもの。しかしその後ウィは国内ツアーのカシオ・ワールドを含め何度も男子ツアーに挑戦したが予選を通ることはなかった。
米男子ツアーで女子が予選を通ったのはLPGA正式発足前のこと。女子最強と謳われた伝説のプレーヤー、ベーブ・ザハリアスが1935年のカスケイドオープン、45年のロサンゼルスオープンで予選突破。さらにフェニックスオープンでは33位、ツーソンオープンで42位の記録が残っているが、彼女以外に予選を突破した選手はまだいない。
最近では女子プロ界屈指の飛ばし屋ブリタニー・リンシコムが18年のPGAツアー、バーバソル選手権に出場しているがやはり決勝ラウンドに進めず。「とにかく飛距離の違いには私でも圧倒されました。PGAツアーの選手は普通に振って320、330ヤードコンスタントに飛ばしてくる。女子の試合で私たち飛ばし屋はパー5で2オンができてイーグルを狙えるのが大きなアドバンテージ。でも男子では通用しませんね」と悲観的。
それでも「レクシー(トンプソン)なら対等に戦えそうだし、アリヤ(ジュタヌガーン)も飛距離はじゅうぶん足りている気がします」と後輩の挑戦に期待を寄せる。
じつはジュタヌガーン、4年前世界ランク1位だった頃「真剣にPGAツアー挑戦を考えた」という。それは幼い頃両親から「アニカという素晴らしい女子プロが男子の試合に挑戦したんだ」ということを聞いた記憶が原体験にあるから。
ドライバーを使わずにドライビングディスタンス260ヤード超えの彼女はLPGAツアーのセッティングではドライバーを使う必要がない。飛ばそうと思えば300ヤード打てるのだから男子と戦うのもやぶさかではないはず。しかし彼女を躊躇わせているのは「PGAツアーのギャラリーの多さ」だ。「あまりにもたくさんのファンが詰めかける舞台で人々の圧とプレッシャーにどう対処したらいいのかわからない」という。
男子ツアー挑戦に消極的な女子が多い中、参戦に向け積極的に動き出しているのプレーヤーがいる。米ノースカロライナ出身の24歳、ローレン・ステファンソンだ。キャリア4年目で未勝利だがPGAツアーのRBCヘリテイジに主催者推薦による招待を取り付けるべく手紙をしたため送っている。
「高校時代は男子と一緒に練習したし同じティーからプレーしていました。(RBCヘリテイジが開催される)ノースカロライナは私の故郷。地元の人たちの前でプレーできる機会があるのだから、少なくとも出場したいという意思を主催者に伝えるのは悪くないことだと思いませんか?」
ヘリテイジは小平智が歴代優勝者でもあり全長7121ヤードとツアーの中では距離が短いセッティング。主催者が彼女の心意気に応えるかどうかはまだわからない。しかし男子ツアーで予選を通過するという女子たちの飽くなき挑戦は続きそうだ。