「剛性とはシャフトの“しなり”と呼ばれる度合いのことをいい、専用の機械で測定して『先がしなりやすいシャフト』、『手元がしなりやすいシャフト』、『中間がしなりやすいシャフト』、『先と手元がしなりやすいシャフト』の4つに分類しています。これらをデータ化することによって、感覚ではなく数値によって客観的にゴルファーに合ったシャフトを見極めることができるようになるんです」
前回の記事で「シャフトの剛性測定の重要性」を羽藤氏に解説してもらったが、今回は剛性測定を生かした「剛性マッチング」について解説してもらおう。ゴルファーであれば誰もがクラブセッティングは”流れが大事”と一度は耳にしたことがあるはずだが、その1つが最も認知されているのは「重量フロー」だろう。しかし、羽藤氏はそれ以外にも「剛性が”マッチング”しているかどうかも大事なことですよ」と続ける。
「ゴルフはクラブ1本でプレーするわけではありません。ドライバー、フェアウェイウッド、ユーティリティ、アイアンなど長さ、重さ、バランスと全く別のクラブを使ってスコアを組み立てていくスポーツです。ですから、どのクラブも似た振り感にすることが、スコアアップの近道になるのですが、そのためには『重量フローが適正なこと』と『シャフトの剛性がマッチングしていること』がとても重要になります。だからこそ、私は『剛性マッチング』もクラブセッティングの流れをよくするひとつの工程だと考えています」
基本的にはドライバーからフェアウェイウッド、ユーティリティ、アイアン、ウェッジに至るまで、シャフトの剛性特性が同じタイプのシャフトで統一することが理想だ。しかし、先調子なのにヘッドの動きが遅いシャフト、元調子なのにヘッドの動きが速いシャフトも存在するため例外もあるとのこと。
たとえば、ドライバーのシャフトはやや先がしなりやすい「グラファイトデザインVR6‐S(以下VR)」。アイアンが手元側がしなりやすい「ダイナミックゴールドS200(以下DG)」だった場合はシャフトだけ見ると剛性マッチングはしていない。しかし「意外と相性がいい」と羽藤氏はその理由をこのように解説する。
「VRが『やや先がしなりやすいシャフト』に対してDGは『手元がしなりやすいシャフト』のため、剛性マッチングはしていません。しかし、DGは元調子なのに振動数値がやや大きいタイプのシャフトだから"高相性"だと私は考えているんです。正確にフィッティングするためには、より緻密(ちみつ)にゴルフクラブの特性を理解をすることが必須になります。だからこそ、シャフトの剛性特性と振動数特性のダブルチェックは欠かせないですし、それらを含めて『クラブセット全体の剛性マッチング』と私は考えています」
「ドライバーが当たらない」と悩むゴルファーは少なくないが、数値を測定すると「アイアンの剛性がスウィングと合っていない」ことが判明したり、その逆のケースも少なくないようだ。クラブを変えてから調子が悪い……というゴルファーは、クラブ全体の剛性マッチングが適正でない可能性があるかもしれない。