フルスウィングのとき、テークバックからP3(腕が地面と平行)のポジションまでは、右足に体重が乗っていくため、ゴルファーの体は右足寄りに動く。
「移動の度合いはそれぞれ人によって差があります。キャメロン・チャンプのように、ほとんどその場で回転する選手もいれば、怪我から復帰後のタイガー・ウッズのように、しっかり右足方向へ乗っていく選手もいます」(以下北野コーチ)
「スポーツボックスAI」では「CHEST」(胸)と「PELVIS」(骨盤)の「SWAY」(移動)という項目で、それぞれ左右の移動量を数値化することができる。数字の単位はインチで表され、アドレスは0、マイナスなら右、プラスなら左という具合だ。よってマイナスの数字が大きくなるプレーヤ―は右への移動が多く、プラスの数字が大きくなる選手は左への移動が大きくなる。
「スポーツボックスの調査データによると、ツアープロの共通点として、必ずトップに入る寸前にはすでに体は左へ動き始めていることがわかっています。これは胸も骨盤も同様です。つまり、多少右に体は移動してもトップに入る前には左に戻るので、結果、プロはスウィング軸が左右にブレていないのです」
ちなみにドライバースウィングでのP3からP4での左右スウェイ量、PGAツアーの平均は、P3で胸-0.6、骨盤-0.5、P4で胸-0.2、骨盤+0.3となっている。
「このデータを見ても、わずかではありますが、いずれもトップでは左方向へ数値が変化し始めています。これがたとえばトップでも右に動き続けてしまう人や、早い段階で身体が左へ流れてしまったりする人は、右に上体がスウェイしてスウィング軸がブレたり、リバースピポットと呼ばれる過度に上体が傾いてしまうエラーに繋がったりします」
では、彼らのような動きを実現するには、どのような練習をすればいいのか?
「オススメなのは『ステップ打ち』です。やり方はいつも通りにアドレスし、バックスウィング中に左足を空中に浮かせます。そしてトップに入る前に左足を着地して踏み込んで、そのまま打ちます。野球のバッティングのような要領です。上手に踏み込むことができれば、上半身と下半身に捻転差が生まれて切り返せるので、ラグが生まれてヘッドスピードと飛距離がアップします」
このドリルで注意するポイントは2点。
「ひとつは左足を右足側へ大きく移動はさせずに、その場で左足を踏み込むことです。左足を浮かせて右足へ移動してしまうと、右にスウェイしすぎてしまい、トップまで体が右に動き続けてしまうので、左へ戻るタイミングが遅れてクラブの最下点が右へズレやすくなり、ダフリやトップ等のミスが出やすくなります。この動きを再現した写真Aのトップでは、胸も骨盤も-6インチずれています」
「もうひとつは左足を踏み込む前に上半身が左へ突っ込み、トップから切り返しの体の動く順番が狂ってしまうことです。このエラーはクラブ軌道が過度なアウトサイドインになりやすく、スライスや引っ掛けのミスにつながりやすくなります。普段下半身をうまく使えず、上体だけで打つ傾向のある人はこのパターンが多いです。この傾向を再現した写真Bの数字では、胸が+5インチ左へ動いているのに対して、骨盤は-0.2インチ右にあり、上半身の方がはるかに左へ早く動いてしまっています」
以上2点のポイントに気をつけて、ハーフスウィングからでもいいので始めてみよう。うまくできるようになると、スウィング軸も安定し、体が動く順番もよくなるので、ショットが安定して飛距離も伸びる効果が期待できるという。
ぜひ、練習に取り入れてみてはいかがだろうか。