「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回はカーボンシャフトの弾性率について。

みんゴル取材班(以下、み):以前は80トンとか90トンとか高弾性をウリにするカーボンシャフトがけっこうありましたが、最近はそれほど目立たなくなってきたように思います。

宮城:最新だと90トンシートを使ったフジクラの「デイトナスピーダーX」がありますし、80トンのグラファイトデザイン「ツアーAD PTハイモジュラス」は完売しました。高弾性カーボンの需要がなくなったわけではありません。ただ、昔よりも高弾性の恩恵を受けられるケースが少なくなってきたのかもしれません。

画像: ドライバーのヘッドがメタルの時代から高弾性のカーボン=高性能というイメージはずっともたれている。写真はブリヂストンj’sメタルのシャフト、「ハーモテックHM-70」の70は高弾性70トンを示す

ドライバーのヘッドがメタルの時代から高弾性のカーボン=高性能というイメージはずっともたれている。写真はブリヂストンj’sメタルのシャフト、「ハーモテックHM-70」の70は高弾性70トンを示す

み:高弾性カーボンの恩恵とはなんでしょう?

宮城:高弾性カーボンの特性はしなってから復元するまでのスピードが速いことです。その結果、球がつかまりやすく、打ち出しも高くなります。

み:それが高弾性カーボンは飛ぶといわれてきた要因ですね。

宮城:確かに振り遅れるタイプやわざとタイミングを遅らせる人は飛距離の恩恵を受けられます。ドライバーの打ち出し角が不足している人にも合います。また、振り遅れやすい長尺ドライバーと高弾性カーボンが相性がいいです。ただ、最近のヘッドはつかまるようになってきているので、つかまるシャフトと組み合わせると左に飛びやすくなります。また、インパクトのタイミングが早い人が高弾性カーボンを使ってもヘッドが戻りすぎてしまい、高弾性がむしろデメリットになることもあります。

み:そういう場合はどんなシャフトを選べばいいですか?

宮城:つかまるヘッドやタイミングの早い人には、しなり戻りのスピードがゆるやかな低中弾性カーボンが合います。フェアウェイウッドも低中弾性ならダウンブローに入りやすく、かっこいい弾道が打ちやすくなります。逆に高弾性カーボンをフェアウェイウッドに使うとインパクト前にヘッドが戻ってしまい、ソールが先に当たりやすくなります。

み:あ、いいフェアウェイウッドを新調したのにソールに当たりやすくなった、という悩みをよく聞きます。高弾性イコール弾きが強くて飛ぶものと考えていましたが、そうとも限らないわけですね。

宮城:高弾性カーボンはあくまでも打ち出しを上げてつかまりのよさを出すための素材であり、高弾性イコール高性能ではありません。飛距離の出ない人が使えば飛ぶようになる可能性がありますが、最初から飛んでいる人にとっては邪魔になります。ちなみにプロの評価が高い「ツアーAD DI」は中弾性の40トンです。シャフトで高性能を追求するなら弾性率を上げるのではなく、樹脂量を減らすことが大事。樹脂の含有率の少ない低レジンのシートを使えば、カーボンらしいシャープな動きになるからです。

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