「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回は最近のPGAツアーでも使用者が多いノーメッキウェッジについて。

みんゴル取材班(以下、み):USPGAツアーでノーメッキのウェッジが流行しています。トッププロがノーメッキに求めているのは打感ですか、それともスピンでしょうか。

宮城:これ、最近の傾向なんですけど、46度だけノーメッキを使っている選手が多いのは、明らかにラフからのスピンコントロールのしやすさを狙っているからです。

み:やはりノーメッキの方がスピンは多く入るのですね。

宮城:それは条件によって違います。新潟の燕三条にはメッキをかけたヘッドを鏡のようにピカピカに研磨してくれる職人さんがいまして、ウェッジにもやってもらいました。鏡面加工されたフェースに手でボールを押しつけるとくっついてまったく動かなくなるくらい摩擦係数が高くなるわけです。

み:なるほど。スコアラインのない真っ平らなフェースもスピンがよくかかると聞いたことがあります。

宮城:花道で乾いているところから打てばフェース面が真っ平らだと接触面積が大きくなるのでスピンはかかります。しかし、雨が降ったりラフで芝が噛んだりするとボールが滑ってしまいます。つまり、条件によってスピンがかかったりかからなかったり、飛んだり飛ばなかったりするわけです。だからツアープロが新品のウェッジをいきなり試合では使いません。新しいウェッジを下ろしたらまずバンカー練習でヘッドを深めに入れたりして表面をあえて傷だらけにしたりします。

画像: 米ツアーでのリクエストでノーメッキのウェッジがまた増えてきているようだが、そのメリットとは?

米ツアーでのリクエストでノーメッキのウェッジがまた増えてきているようだが、そのメリットとは?

み:ノーメッキのウェッジはどうですか。

宮城:条件が変わっても同じように飛んでくれるのがノーメッキです。ただしノーメッキでも新品だとそんなにスピンはかかりません。2、3ラウンドくらい練習して表面がギザギザになって少しずつ錆びが浮いてきてからがウェッジのいちばん美味しいところです。ボールがフェースに噛んで、フェースに乗る時間が長くなるので、そのぶんスピンがかかります。ただしノーメッキにはデメリットもあります。メッキで保護されていないと溝の角が削れて早く丸くなってしまうので、ツアープロだと3ヶ月に1回くらいか長く使っても半年に1回は交換が必要。アマチュアでもラウンドや練習をたくさんする人だと1年に1回くらい替えないと目に見えてスピン性能が落ちてきます。

み:高性能なぶんだけ寿命が短いわけですね。

宮城:メッキしたウェッジがスポーツカーなら、ノーメッキはレーシングカーみたいなもので、耐久性を犠牲にしても性能を追求しているわけです。でも、球がピンに寄らないと生活できないプロはそれを使うしかありません。生活のかかっていないアマチュアにはそこまでの性能は必要ないともいえます。

み:ヘッドを錆び放題にしておくのも気になりますね。

宮城:見た目を気にする人はブラッククロムなどメッキの層が薄いものを選ぶといいですよ。使っているうちにフェースとソールだけメッキが剥げて色が変わり錆びも出てきますが、バックフェースはピカピカのままで使えます。

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