「1回目はもう終わって、2回目の予約もしました」。話題は新型コロナウイルスのワクチン接種。言葉の主は「アース・モンダミンカップ」を11位タイで終えた勝みなみだ。これまで勝は副作用がプレーに影響するリスクなどを考慮し、ワクチン接種を避けてきた。現状、米国入国には2回の接種が必要で、出場権を得ていた今月初めの海外メジャー「全米女子オープン」にも出場しなかったほど。突然の心変わりは12月に行われる来季の出場権をかけた米女子ツアーの最終予選会(ファイナルQT)受験を本格的に視野に入れ始めたからだ。
以前は「メジャーの出場権を得て時々行ければいいかな」というのが勝のスタンスだった。それでも、2019年から「全米女子オープン」に3年連続で出場するなど、海外でのプレーを経験するうちに「日本のコースとは違う楽しさがある」と徐々に関心は強くなった。また、周囲から米女子ツアー挑戦をすすめられることも多くなった。「(笹生優花のキャディをしていた)ライオネルさんには『みなみはアメリカに行かないの? 活躍できると思うよ』と言われました。(有村)智恵さんや(上田)桃子さんも『経験しておいたほうがいい』という話をしてくださって……」。そうした声がかかるのは勝の飛距離がここ数年で大きく伸びているのも大きな要因。米国の方がより飛距離生かせるという感覚は勝自身にもあるという。
まだ心が揺れていた勝を最後に後押ししたのは常に間近でサポートしてくれる母・久美さんだった。「『私がワクチンを打っていないせいで、選択肢が狭まるのは嫌だから先に受けるね』って言ったら、みなみも『じゃあ私も受ける』って言い出して、結局、一緒に受けることになったんです」。この会話の時点では選択肢のひとつだったかもしれないが、勝は「今は行くつもりでいます」とほぼ挑戦を決意している。
ワクチン問題さえクリアすれば、環境は整っている。昨年の国内メジャー「日本女子オープン」で優勝。そこで得た3年間のシード権は10年以内であれば、いつからでも行使することができる。「帰ってきても日本でシードがあるというのは大きいです」。米国で華々しい活躍をした場合でも、仮にそれが叶わなかったとしても、日本ツアーという帰る場所があるのは精神的にも大きなプラスだ。
残る課題はファイナルQTからの受験資格である世界ランク75位以内(8月8日時点)をクリアすること。同400位以内の資格で2次(10月)からの受験となると、日米を往復する厳しい日程になってしまうため、今年は断念となる可能性が高い。6月28日時点で勝はわずかに圏外の76位。シーズン序盤からボーダーライン上を行ったり来たりが続いている。「今週やっとショットの調子が上がってきたという手ごたえがありました。1勝できれば(75位以内は)確定だと思うので、優勝してすっきりさせたいです」。8月8日までは残り5試合。その一打一打が次のステージにつながっている。