ゴルフウェアの移り変わりは、スタープレーヤーの台頭や世相と無縁ではない。21世紀に入って“藍ちゃんブーム”や“遼くんブーム”が巻き起こり、2019年には“シブコフィーバー”に沸くと、ゴルフアパレルのブランドやファッション性にもどんどん目が向けられるようになった。
空前のアウトドアブームとなった今は、キャンプや釣りとともにゴルフを始める若者や女性が増えている。チームスポーツの野球やサッカーのように統一されたユニフォームではなく、個人競技なこともあり自由度が高いゴルフウェアのデザインはどんどん洗練されていっている。
現在、ゴルフラインのアパレルを展開している、ビームス、トミーヒルフィガー、チャンピオン、ニューバランス、エドウイン、ランバン、J.リンドバーグ、サマンサタバサといった名前は、一般的なタウンユースのファッションブランドやカジュアルブランドとして、百貨店やショッピングモール、ネットなどで目にしたことがある人も多いのでは。
今や世界的な知名度を得たユニクロの存在も見逃せない。ゴルフに適しているユニクロのシャツ、パンツ、アンダーウェアは多いが、そのイメージが決定的になったのは、2013年にアダム・スコットがグローバルブランドアンバサダーになったことだろう。しかも、その直後の「マスターズ」では悲願のメジャー初タイトルを獲り、ユニクロのポロシャツの上にグリーンジャケットを羽織ったこともあり、世界中のゴルフファンの目に触れた。
さらに今年に入ると、ゴルフラインの立ち上げが相次いでいる。サタデーズニューヨークシティがサタデーズゴルフを、セシルマクビーがセシルマクビーグリーンを、ジーンズの老舗として知られるリー(Lee)がリーゴルフを、オークリーがウィメンズのゴルフラインを、直近のニュースでは、昨年秋にゴルフの新レーベルがデビューしたユナイテッドアローズとテーラーメイドがコラボ、といった流れだ。
同時に、今年の春夏シーズンからスタートしたのは、人気ファッションブランドのナノ・ユニバースが立ち上げたゴルフウェアレーベル「beats per minute(ビーツ・パー・ミニット)」だ。ナノ・ユニバースのウィメンズプレス担当・伊知地萌衣さんに、レーベルの特徴、ゴルフメーカーやスポーツブランドが出すゴルフウェアとの違いを聞くと、
「『ビーツ・パー・ミニット』というゴルフウェアレーベルは、コースデビュー前の初心者から名門コースへ行く上級者まで、ゴルフを愛するあらゆる人々へ向けたコレクションを展開しています。ゴルフの正装を尊重しながら、ストリートスタイルを取り入れて“街着”としても着用できるウェアを展開しているため、コースとシティの垣根を越えて着られます。これからゴルフを始める方にも敷居の高さを感じさせないデザインや、上級者の方にも満足していただける機能性がある点も強みだと思っています」とのこと。
ファッションブランドのゴルフウェアだからといってハイセンスなだけではなく、素材やノウハウの進化もあってゴルフのパフォーマンスが発揮しやすく工夫されている。
クラブメーカーのウェアにするか、スポーツメーカーのウェアにするか、ゴルフウェア専用ブランドのウェアにするか、それともファッションブランドのゴルフウェアにするか、ゴルフアパレルの群雄割拠は、今後も続きそうだ。