全英オープン初制覇を狙う松山英樹の、大会直前スウィングが現地から届いた。気になる仕上がり具合はどうなのか? 松山の最新スウィングを黒宮幹仁コーチに解説してもらった。

風に屈せず自分のスウィングを貫けるか?

全英オープンと言えば風との戦い。セントアンドリュースは海からの風が強く吹き、選手の感覚を狂わせていきます。そして、風を意識しすぎるあまり、普段よりもクラブが少し上から入ってしまうなど、スウィングにも影響を及ぼしていくのです。しかし、松山選手の最新スウィングを見るとその気配が一切ない。さすがといった感じで、“いつも通りの松山英樹”のスウィングができています。4日間、風に上手く対応していき、このスウィングを保つことができれば、優勝争いに加われるのではないかと思います。

画像: 風との戦いになる全英オープンでは、いつも通りのスウィングができるかどうかがポイントだと、黒宮コーチは分析している

風との戦いになる全英オープンでは、いつも通りのスウィングができるかどうかがポイントだと、黒宮コーチは分析している

切り返しで腕と体が逆方向に動いていく

—―では松山選手の“いつも通り”とはなんなのか?

スウィングで注目してほしいのは、トップから切り返しの動き。下半身は飛球線方向に動き始めるのに対して、手は飛球線方向と反対に動いています。

簡単に言うと、切り返しで手元を自分のほうに引き付けるのではなく、少し体から離れていくように腕を使っています。この動きをすることで、ダウンスウィングでヘッドが遠い位置を通って下りてくるので、スウィングの円弧が大きくなります。より大きな力を生み出しながら、クラブを下ろすことができるというメリットがあります。

さらに、軌道がズレにくいというメリットもあり、つねに同じ軌道、同じフェースアングルでインパクトを迎えられるので、パワーだけでなく、再現性が非常に高いスウィングと言えるわけです。これが、“いつも通り”の松山選手のスウィングなのです。

画像: 切り返しで、腰は左方向に回転を始めているが、腕はまだ高い位置がキープされている。この動きが入るかどうかで、ショットの精度が大きく変わってくる

切り返しで、腰は左方向に回転を始めているが、腕はまだ高い位置がキープされている。この動きが入るかどうかで、ショットの精度が大きく変わってくる

左への体重移動でよりパワーが増す

もうひとつの注目ポイントとしては、切り返しからダウンスウィングに入るときに起こる左への体重移動です。切り返しで手を飛球線方向と反対に動かす動きをすると、右サイドの円弧が大きくなるのは前述した通りですが、それにプラスして、この動きを入れると、クラブがゆるやかな軌道を描いて下りてくるという特徴もあります。いわゆる“シャローに下りてくる”のですが、左へのシフトが入らないと、体の軸が右に倒れやすく、ボールにパワーが伝えられないどころか、ダフリの危険性も出てきてしまいます。

しかし、現在の松山選手はじゅうぶん左へのシフトがおこなわれているため、ミスが少なく安定したショットを打てているはずです。ダウンスウィングからは左の股関節の上で回り、フィニッシュでは左足の上で直立する形になっていますよね。パワーも出て効率もいいスウィングができている証拠です。

画像: ダウンスウィングで左へシフトしていく際、上体が右に傾かず真っすぐな軸が保たれている

ダウンスウィングで左へシフトしていく際、上体が右に傾かず真っすぐな軸が保たれている

閉じ気味にクラブを上げる動きが出ないでほしい

不安材料があるとすれば、松山選手は調子が悪くなってくるとクラブフェースを閉じ気味(シャット)に上げるクセがあります。スウィング中、若干ですがずっとフェースが閉じた状態になるので、左へのミスになりやすく、本来の持ち球のフェードとは逆球が出てしまうことも。マネジメントに大きな影響を及ぼしかねないので、今の調子のまま、”いつも通り”の松山選手のスウィングで戦ってほしいです。それを簡単にさせてくれないのが、メジャーの舞台だとは思いますが、松山選手ならきっとやってくれるはず! 期待しましょう!

写真/姉﨑正

画像: www.golfdigest-minna.jp
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