体の強さが増し世界の頂点に
フィッツパトリックはイングランド出身で、リンクスコースで育ったということもあり、球を操る技術はプロデビュー当時から高かったのですが、世界のトップで戦うには、飛距離面で少し物足りない印象でした。それが、積極的に筋力トレーニングを取り入れることで体を大きくし、飛距離アップに成功しました。もともと、ボールコントロールにかんしては類まれな才能を持っていたフィッツパトリック。そこに飛距離が加わり、両方が上手くかみ合うことで世界のトップの仲間入りを果たしたわけです。
やりたいスウィングに
体が追いついてきた
飛距離がまだそこまで出ていない頃のフィッツパトリックは、フェース面をシャットに使って体の回転で飛ばすような打ち方をしていました。これは、フェースの開閉を少なくして体の回転で飛ばすので、ある種体の強さに依存する打ち方でもあるわけです。当時のフィッツパトリックには、まだ体幹力が足りなかったのでしょう。インパクト手前からやや背骨が右に傾いたり、腰が回りきらず手首を早めにリリースしたり……様々な体のエラーが発生して飛距離を欠いていました。
しかし、現在のスウィングを見ると、基本的な部分は変わっていませんが、体の強さが増したからか、印象が大きく変わりました。特に、体が強くなったことで今までとはクラブをリリースするタイミングに大きな違いがあります。
右ひじを引きつけても
体の軸が傾かない
クラブをリリースするタイミングでポイントになるのが、切り返し以降の「右ひじ」と「左手首」の使い方です。
ダウンスウィングで右ひじを体のほうに引きつけながら下ろしてくるのですが、体幹の力が強くないと、前述したように体の軸が右に傾きすぎてしまい、クラブが下から入りすぎるなどのミスが起こります。しかし、フィッツパトリックは体の軸が傾かずにほぼ真っすぐな状態でクラブを下ろしてきています。これだけ真っすぐな軸が保たれていると、スムーズに回転できるので、回転スピードもアップし、飛距離が出るようになったのだと思います。
右ひじを引きつける動きにより、結果的にダウンスウィングの途中で大きなタメが生まれます。このタメをどこで解放するかで、ショットの精度や飛距離が大きく変わるわけですが、そのカギを握っているのが左手首の角度。写真を見てもわかる通り、フィッツパトリックは、インパクト直前まで左手首の角度をキープし、インパクト後に解放しているため、ダウンスウィングで溜まった大きなパワーを、すべてボールにぶつけることができているというわけです。
ギリギリまでリリースを我慢できるということは、言い換えればそれだけ自分の意思でクラブをコントロールできるということでもあります。体全体がパワーアップしたことで、飛距離アップはもちろん、今までのボールコントロール技術にもさらに磨きがかかったように見えます。このスウィングを4日間続けられたら、全米オープンに続いて全英オープン制覇も、十分あると思います!
写真/姉﨑正