――プロゴルファーのスウィングは、下半身から始動をして生まれたエネルギーを、胴体から腕、そして最終的にクラブ、そしてボールへと伝達していく動き方をする。この一連の動きの中で、トップからの切り返しの時に上半身と下半身の捻転差が生じることから、一見すると体がバラバラに動いているように見えることがある。この下半身と上半身がバラバラに動くことは、いいのか、悪いのかという、プロが答えにくい設問を投げかけたところ、二人は回答に相当苦慮をし、頭の中が迷走し始めたみたいである。
合田:う~ん、なんて説明していいか分からないような話をもって来るのやめてくれない、ほんと。
卯木:(笑)。
合田:だって、体の動きがバラバラになっちゃうのは悪い動きなんだよなぁ。
卯木:いや、でも基本は下半身が動いてから上半身が動きますよね。それをバラバラに動いていると表現をするのかどうかというのが問題ですよね。
合田:いや、それは連動して動くということなんだから、バラバラに動くとは言わないんじゃない。本来、バラバラに動くと言うのは悪い意味で使うケースが多いわけでしょ。「お~、バラバラに動いていていいねぇ」なんて言うか?
卯木:言いませんよね。でも、ダウンスウィングでは上と下が一緒に動く「ドアスウィング」はよくないわけですから。そうなるとバラバラに動いたほうが良いってことになりませんか。
合田:動きとしてはそれでイイんだけどね。
――体の動き方として、下半身が動いて、それに連動して上半身が動くと言うのが『正解』であることで合意を見た二人。ではそれが、“バラバラ”に動くという表現で良いのかで意見を出し合うことになった。
合田:“バラバラ”って言うのがどうも気になるな。じゃあ、ピッチングフォームもあれはバラバラの動きなの?
卯木:なんか屁理屈ジジイみたいになってません(笑)。
合田:いやいやいや。でもさ、バラバラではないでしょ。
卯木:どうなんだろう……。バラバラっていう表現がよくないのかもしれないけど。じゃあ、上と下が一緒に動くのはよくないわけだから、『一緒』の反対はなんていうのかというと……。
合田:そんなの広辞苑を引け!
卯木:(笑)。あれ、今、何の話をしているんでしたっけ。
合田:だから、切り返しで上半身は未だトップに行きついていないのに下半身はダウンスウィングに向かって動き出すということは事実としてあります。でもこれをバラバラに動くと言うのかどうかですよ。
卯木:でも、明らかに別々の動きはしていますよね。それを表現をすると“バラバラ”っていう言い方になっちゃうのかなという感じもしますけど。
合田:う~ん、ちょっと、何言ってるか分からないです。
卯木:納得いってないみたいですね。
――トップでの切り返しの上半身と下半身の捻転差を、卯木は上と下はバラバラに動いているという表現を容認しているのに対し、納得いかない合田だったが、ここでなんと合田からこの論議に決着をつけるような発言が飛び出した。
合田:いや、でもバラバラって言えばバラバラだよね。だってダウンスウィングで下半身はターゲット方向に回って行こうとしている時に、クラブはターゲットとは反対方向に向けて振っていきますからね。これは確かにバラバラの動きです。
卯木:でもスウィング全体の動きで見ると連動性によって、最終的にはクラブはターゲット方向に振られていきますからね。
合田:そう。下半身の動きに引っ張られてインパクトでクラブが戻ってくる、これでヘッドが走って飛距離でも出るわけですからね。この動きが重要です。アマチュアの人なんかは、切り返しでいきなりターゲット方向にクラブを振っていこうとするから、その結果、アウトサイドからカットスウィングになったり、フェースが被ってきたりするわけだから。そう考えると、上半身と下半身は“バラバラ”に動くことが正解ってことになりますね。
卯木:アマチュアの人は、とくに切り返しでの下半身の動きとクラブを動かす方向が“バラバラ”になる動きを覚えるといいかもしれないですね。
合田:そうですね。