タイガーのスタートした9時58分は日差しも少なく、ネックウオーマーを手放せない寒さを感じる光景でのスタートになりました。今のタイガーにとって、寒さはパフォーマンスに影響を及ぼしたに違いありません。それでも3番で8メートルほどのバーディパットを決め、グリーン上のタッチで苦労した昨日からのアジャスト能力の高さを見せてくれました。
しかし、4番、6番でボギー、折り返して16番では2打目をグリーン手前にショートすると、マウンドを越えてすぐのピンに対して、高く上げたアプローチがショートしてバンカーにつかまりダブルボギーとします。
17番、18番をパーで終えると、ギャラリーからの大きな声援を受けて感傷的になるタイガーの姿が垣間見えました。マスターズののときもそうでしたが、足を切断する可能性もあった交通事故の大ケガから復帰し、プレーする姿を見せてくれたことへの敬意を表すギャラリーに対してタイガーがありがとうと答えるようなシーンが印象的でした。
「ここセントアンドリュースでもう一度全英オープンに出場できるかどうか、体力的にはわかりません。だから18番での暖かい声援は僕の心に響いたよ。このイベントにかかわるすべての人達の理解と敬意を感じました」と会見では世界で最も大好きなコースの一つであるセントアンドリュースの温かさを改めて口にしました。
プレーを振り返ると、パッティングのタッチは大きくショートするようなことはありませんでしたが、ラインがひと筋合わずにカップをかすめることが多かったように思います。ラインに乗せてタッチを合わせるようなパットではなく、芝に影響されないくらいの強さで打つくらいの強いタッチで方向性も出さなければならないグリーンに苦労していました。スコアを伸ばしている上位陣を見ると、深いラフに入れずにバーディチャンスにつけられるショットの好調さもありますが、しっかりとバーディを奪えるグリーン上のタッチの強さが目につきます。
世界中を転戦する中でパターの種類やロフト違いを持ち歩き、グリーンに合わせたパターを使う選手もいますがタイガーはバックフェースに鉛を貼ってグリーンに合わせる調整をしていました。
以前プレーして感じたのは、グリーン外からパターで寄せることも珍しくないリンクスでは、パットの距離感をつかむことはスコアメイクには特に重要になりますし、特にアウトとインで共有する大きくてアンジュレーションのあるセントアンドリュースのグリーンでは、ロングパットが残ることも多く、スコアメイクには不可欠な要素といえるでしょう。
ティーショットで大きく曲げ、もうダメかもしれない状況から起死回生のアイアンショットやアプローチのスーパーショットで奇跡を起こしてきましたし、プレーだけでなくひざや腰の手術や数々の問題も乗り越え、その都度復活して勇気と感動を与えてくれる。それこそがタイガーであり、これからもリハビリを続け、きっと来年には上位で戦う姿を見せてくれるのではないでしょうか。
写真/姉崎正