世界を知る中嶋常幸が主宰し、畑岡奈紗や河本力を輩出した「ヒルズゴルフ トミーアカデミー」。入校するためのセレクションを取材する機会に恵まれた。

世界で勝てるプロを育成する

静ヒルズCC、コース改造の設計・監修を引き受けた中嶋常幸。完成間近のとき「こんなところから世界で勝てる選手を育てられたらいいですよね」と故・森稔氏にコースを見ながら声をかけられたことが「ヒルズゴルフトミーアカデミー」の原点だという。2012年から募集を開始し、一期二年間を育成期間とし、これまで畑岡奈紗、蛭田みなみや河本力、杉原大河といった活躍する選手を輩出してきた。

セレクションは二年に一度開催されていたが、コロナの影響で三年ぶりの六期生の募集となり、中学生から大学1年生までの130名が全国から集まった。気になるテストを少しだけ紹介しよう。

画像: 受験生にはじゅうぶんにアピールする時間が与えられ、中嶋常幸を始めとしたスタッフに見守られさまざまなテストを受ける

受験生にはじゅうぶんにアピールする時間が与えられ、中嶋常幸を始めとしたスタッフに見守られさまざまなテストを受ける

練習場でウォーミングアップのあとに、ウェッジ、ショートアイアン、ドライバーと5分から10分程度打ち、最後に芝の上から30ヤードのアプローチを5球打って練習場でのテストは終了。

その後パッティンググリーンに移動して、いろんな距離のパットをテスト。寄せた距離、カップインを点数に換算して評価される。

続いて、坂道を走って運動能力のチェックを受けたらショートコースに移動して、9ホールプレーしてスコアを提出するまでが今回のテスト内容だった。

画像: 専属トレーナーによる走る姿のチェックを受ける

専属トレーナーによる走る姿のチェックを受ける

練習場から見ていると、まず中嶋が「アカデミーとして受け入れる人数の制限があるから今回のテストにもし不合格になったとしても君たちに才能がないというわけではないから」と受験生に話すところから始まった。

ウォーミングアップの時間はたっぷりと取ってあり、打球テストも1球や2球ではなく、打つ姿もじっくりと時間をかけてチェック。ドライバーを打つ際には、ある程度打ったあとに振る力、潜在的なパワーを引き出そうと「方向性は気にしないで、思い切り飛ばしてみろ。どれだけ飛ばせるか見せてくれ」と中嶋は檄を飛ばす。得意なクラブや、目標とするプロゴルファーを質問したり、受験生たちとできる限り会話を持つ中嶋の姿が印象的だった。

画像: できる限りの会話を持ち子供たちに強くなるためのヒントを持ち帰って欲しいと中嶋は話す

できる限りの会話を持ち子供たちに強くなるためのヒントを持ち帰って欲しいと中嶋は話す

セレクションを手伝っていたアカデミーの一期生でツアーで活躍する小滝水音プロに話を聞くと、トミーアカデミーがなかったら今の自分はないとこの10年を振り返った。

「親は送迎だけでアカデミー内には入れない決まりなので、子供たちだけで合宿や練習に参加して、厳しいトレーニングや練習をしました。アカデミー内の同世代の子は、ライバルというより一緒に乗り越えてきた仲間という存在ですね。そのおかげで厳しい合宿も乗り越えられましたし、プロテストも合格できました」(小滝水音)

画像: スタッフとして手伝っていた一期生としてアカデミーで学びプロとしてする小滝水音

スタッフとして手伝っていた一期生としてアカデミーで学びプロとしてする小滝水音

近くに在住の生徒は普段から静ヒルズの施設を利用して練習できるが、おもな活動は合計で40日程度になる、年に3回から4回開催される合宿がメイン。その際の料金は特別料金が設定された実費のみとされ、経済的な負担は最小限に抑えられていることも特徴だろう。

アカデミーのセレクションについて中嶋プロの話を聞いた。

編集部:かなり時間をかけたテスト内容になっています。

中嶋:できるだけ子供たちがアピールできる場を作るようにしています。アプローチからドライバーまでね。たくさん打てばナイスショットのパフォーマンスやミスの傾向も見えるのでね。テストを受けに来た子供たちには、じゅうぶんな時間を与えてあげたいなと思っています。

編集部:ほとんどの子供たちと会話する姿が印象的でした。

中嶋:顔見知りの子もいるし、初めての子もいます。いろんな会話の中で何かヒントになることを持って帰ってもらえたらいいでよね。

編集部:10年間で変わってきたことはありますか?

中嶋:アカデミーから畑岡奈紗、杉原大河、河本力が出てそういう活躍も後押しして、受験生の幅や人数が増えてきましたね。年齢制限はありますがいろんな子供たちがチャレンジしてくれることが嬉しいですね。

画像: 厳しくも愛のある目線で子供たちの姿を見つめる中嶋常幸

厳しくも愛のある目線で子供たちの姿を見つめる中嶋常幸

編集部:コーチに習っている子供が増えて来ていると感じました。

中嶋:そうですね。コーチに習う子も増えてきていると思いますね。コーチがいてもいなくても、たくさんのソースから吸収して強くなればいいのであって、どこで習おうと構わないんです。子供たちにとってはどうやって強くなれるかが大事なことなのでね。トミーアカデミーに合格したら二年間でたくさんのものを吸収して欲しいと思います。

編集部:小滝水音プロはトミーアカデミーのおかげで今の自分があると話していました。

中嶋:トミーアカデミーでは、チームワークというか競い合うライバルでもあり、支え合う仲間たちという、そういうものがあったからついて来れたんだと思う。

編集部:コースのメンバーを含めたサポート体制についてはいかがでしょう?

中嶋:非常に暖かいサポートを受けています。そのおかげもあってコースでの練習環境や合宿なども含めて子供たちの負担を減らせるようにしていただいています。

すでに米女子ツアーで活躍する畑岡奈紗を輩出しているが、アカデミーを卒業して20歳くらいで最初のピークを迎える女子と比べて、29から30歳でピークを迎える男子を育てることも考えていきたいと話す中嶋。引き続き「ヒルズゴルフ トミーアカデミー」に注目していきたい。

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