いよいよ開幕となる海外メジャー「AIG女子オープン」に日本から出場する選手のひとり、堀琴音。そんな堀を指導し、同大会ではキャディも兼任するのが、プロコーチ・森守洋だ。
すでに開催コースであるスコットランドの「ミュアフィールド」に現地入りし、3日間の練習ラウンドをこなしたという森がコースで強く印象に残ったのは「風」、そして「風まで計算に入れたかのようなコース設計」だという。
「まず、リンクスコースということもあって風がとにかく強く、プロでもボールがなくなってしまうレベルです。しかもアウトコースは1番から時計回りに、インコースは10番から反時計回りにラウンドするよう配置されているので、風向が一方方向からであってもフォロー、アゲンスト、右、左からとホールによってすべての方向からの風の影響を受けるように設計されているんです」(森コーチ、以下同)
風の強さもあり、ホールごとに飛距離への影響も大きい。加えてフェアウェイは硬くランが出やすい環境ということもあり、「(堀の場合は)ドライバーで平均230ヤードですが、フォローだと310~320ヤード、アゲンストだと200ヤード飛ぶか飛ばないかで、100ヤード以上の差が風によって出てきますね」という。もちろん飛距離だけでなく弾道の管理も重要な要素となる。
「リンクスコースなので木がない、つまり何もない空間に対して風の影響も考慮しながら出球をしっかり管理できる選手でないと通用しないと感じましたね。意図せず曲がってしまえば各所にあるブッシュやポットバンカーに入ってしまうリスクがあります。もしつかまってしまえば脱出に専念するしかなくなってしまいますから」
こういった風の影響に加え、さらにコース攻略を難しくしているのが「グリーンのアンジュレーション、そしてハザードの配置」だと森コーチは続ける。
「グリーンスピードは速くても10フィートまででそこまで高速ではありませんが、グリーンのアンジュレーションが結構あって厄介ですね。とくに8番ホールは象徴的で、グリーン手前側が高くなっていて奥側にかけて下りになる傾斜なのに、グリーン30ヤード手前にはポットバンカーが配置されているんです。グリーンに乗せようとすると奥側に流れてしまいますから、手前側を狙いたいところですが、今度はバンカーを越えることも考えなければいけない。そんなシビアなショットを、風が吹く中で打つ必要があるわけです」
風、グリーンのアンジュレーション、そして絶妙なハザードの配置が、グリーンオンを狙うショットの難易度を劇的に高めているわけだ。実際、練習ラウンドでは「みんな転がして寄せていましたね」と森コーチは言う。
「グリーンが速くなくて、フェアウェイとあまり変わらないので、必然的に20~30ヤード手前からパターを選んで、グリーンと同じように打つんです。チョン・インジと練習ラウンドが一緒だったのですが、彼女ほどのアプローチ巧者でもパターや6番アイアン、ユーティリティで転がして寄せる場面は多かったですね」
話をかいつまんで聞くだけでも難易度の高さが伝わってくるミュアフィールド。同コースでいいスコアを出すためのカギとなるのは「パー3です」と森コーチ。
「日本(のコース)ではパー3はバーディチャンス、という印象ですが、ミュアフィールドではピンの位置がどこに切ってあっても、グリーン真ん中狙いで乗ってくれたらいいね、という難易度です。とくにフォローの風が吹いていて、グリーン手前に乗せても奥のカラーまで転がってしまうホールが2箇所ほどあるので、いかにショートホールでボギーを打たないか、そしてロングホールでスコアを重ねられるかが重要だと思います」
しかしそんな難コースを相手取っても、「(堀は)3日間練習ラウンドでコースを回って、一回もブッシュ、ラフに入っていないので、いい線に行くんじゃないかなと思います」と手応えはじゅうぶん。堀・森ペアの活躍に、期待大だ。