ここ数年、韓国では空前のゴルフブームなのだという。
日本でも昨今、ゴルフ人気は大いに高まっているが、韓国での勢いはそれを遥かに凌ぐものだ。
一節では、韓国国内のゴルフ市場の規模は年間で約13兆ウォン(※日本円で約1兆3000億円)にもなり、日本のゴルフ市場を上回る勢いだ。ここ2,3年で倍以上成長しており、その過熱ぶりがよくわかる。
一部の海外パーツメーカーでは、日本市場よりも勢いのある韓国市場を優先して供給しているという話もある。現在は世界的なゴルフブームの影響で、ゴルフ界ではシャフトやグリップなどの物不足が深刻な影響となっているが、国内の物不足にはそんな事情もあるようだ。
そんな韓国市場で長期に渡って売れ続けている日本メーカーのアイアンがある。それがブリヂストンの「V300」だ。ドライバーは日本同様、テーラーメイドやキャロウェイなどの海外メーカーが強いが、「V300」はアイアンのカテゴリーで常にトップの人気を続けているロングセラーシリーズになっている。
「V300」と言ってもピンときたゴルファーは少ないかもしれない。日本では、2003年に「ツアーステージ V300」として発売されたモデルで、軟鉄鍛造ながらヘッドが大きめのやさしいキャビティバックだった。当時は友利勝良や塩谷育代などプロが使用するケースもあった。
もちろん日本ではすでに販売を終了しているモデルなのだが、韓国内で非常に人気だったため、韓国サイドからは継続して販売してほしいという強い要望があった。その声に応えるかたちで継続して販売され、その後は「V300」という名称を残したまま、モデルチェンジを繰り返した。発売されたばかりの2022年モデルは、なんと8代目の「V300」だ。
モデルチェンジしても、軟鉄鍛造のやさしいキャビティバックというコンセプトはずっと継続しているのが特徴だ。なぜこれほど人気があるのかはよくわからないが、軟鉄鍛造の打感の良さとミスへの寛容性のバランスが好まれたのだろう。ロングセラーモデルとして、韓国ではアイアンの定番と認識されている点も見逃せない。
異素材や新構造が矢継ぎ早に登場する現在、軟鉄鍛造でかつやさしいという発売当初のコンセプトが、彼国で長年支持されているのは興味深い。同社では国内でも、「ViQフォージド」や「GRフォージド(2010)」など、こうしたやさしい軟鉄鍛造を断続的に発売していた。新モデルの「222CB+」などは期待できそうだ。