――ユージが師匠の高島に最後にレッスンを受けたのは、2021年の11月。9カ月もブランクがあったのは、ある事情があったからだった。
ユージ:師匠、ご出産おめでとうございます!
高島:ありがとうございます(笑)。
ユージ:それにしても出産が6月24日とお聞きしましたが、なんと、産後一か月半で現場復帰とは、早い!
高島:ハハハ。じつはすでに、レッスンの仕事は産後2週間で始めています。
ユージ:さすがです! そんな師匠のお体を気遣いながらも早速なんですが、じつは今年の秋に、またドラコン大会に出ようと思っているんですよ。
高島:お、いいですね。
ユージ:そこで師匠に、今年は大会でもう1段ステップアップできるように指導をしていただけないかなと。
高島:なるほど。じゃあ、とりあえずスウィングを見せてください。
ユージ:わかりました。
――ユージが現在、普段のラウンドでおこなっているのと同じスピード感でドライバーショットを打ってみる。すると、高島が知っているスライサーぶりは鳴りを潜め、ストレートボールで300ヤード越えを放つユージのスウィングを目の当たりにする。
高島:メッチャいいじゃないですか。スピン量も1787rpmで、キャリーで280ヤード。言うことないですね。
ユージ:いやいや、今は軽く振っていますから。ただ、ドラコン大会の時に、もっと力を入れて振った時にどうなっちゃうのかという心配もあるので。
高島:じゃあ次は、ドラコン大会を想定して打ってみましょうか。
――高島の提案で、ドラコン大会の本番を想定して6発打ってみることに。さらに、ドラコン大会のグリッドの左右幅が50ヤード程度に設定されていることを念頭に置き、左右それぞれ30ヤード以内のブレはOKという、かなり緩めの設定で行った。その結果は以下の通り。
――1球目 右64.3ヤード外れOUT
――2球目 左に大きく外れOUT
――3球目 左に33ヤードでわずかにOUT
――4球目 右に外れてOUT
――5球目 右に外れてOUT
――6球目 右に外れてOUT
ユージ:最悪。
高島:記録はゼロです! しかし、飛ばしに掛かると右に左に……というミスが相変わらず出るんだということが分かりましたよ。
ユージ:わかっちゃいましたか。スピン量も3900rpmとかいっちゃってますもんね。
高島:滅茶苦茶カットに入ってきます。
ユージ:“スイカ割り”みたいな打ち方になってますね(笑)。
――秋のドラコン大会に向けて、この本番になると出てくる“カット打ち”のスライスを直さないといけない。そこで、大会の規定打数の6球の範囲内でカット軌道を修正する方法を高島に教えてもらうことに。
高島:まず、どうしてカット軌道になるのかという原理を説明します。簡単に言うと、ダウンスウィングでクラブヘッドが、手元やスウィングプレーンに対して外側にくるとカット軌道になります。つまり、ダウンスウィングでシャフトが立つほどクラブは外から下りてきてカット軌道になるわけですよね。逆に、シャフトが手元やプレーンの後る側(体の背後)に倒れてくるほどインサイドから下りてくるということになります。
ユージ:なるほど。
高島:そこで今からカット軌道を直すために、切り返しから「クラブを後ろに倒す」という動きをやっていこうと思います。
ユージ:その動きに憧れがあります。
高島:ユージさんが言うのは、USPGAツアーのプロ達が盛んにやっている「シャローイング」のことですよね。クラブの動きは似ていますけれど、今回の目的はプレーンに対して適正な角度にシャフトを下ろしてくることで、アウトサイド軌道を修正をするのが目的ということなんです。
ユージ:なるほど。
――高島がユージのダウンスウィングでの手元の動きに修正を加えていく。
高島:トップからの切り返しで手元を体の前(正面方向)に出していきます。この時に、手を下に落とすという動きは要りません。手元を前方に出していくことで自然にヘッドが下がり、それによってクラブが倒れていく、この一連の動きをやってみてください。
ユージ:へぇ~、何か変な感じがしますね。
高島:クラブを倒すと右ひじが体の内側、右わき腹辺りに入ってきます。この右ひじを内側に入れた形のまま体を回していきます。
ユージ:あ、このインパクト直前の形は、プロのスウィングでよく見る形ですよね。
高島:そう、インパクト直前の「右ひじの形」がとても重要なんです。ダウンスウィングでヘッドがプレーンの外から下りてくる人は、右ひじが外側に開いています。これがカット打ちの人のインパクト直前の形です。それを修正するために、クラブを後ろに倒すことで右ひじが内側に入ると軌道がインサイドからになって、そうなるとつかまったドローが打てるようになるということなんです。
ユージ:そういう原理なんですね。ポイントは右ひじのポジションですね。
高島:この動きの中で注意して欲しいのが、ダウンスウィングでクラブを倒していく時に、手元や右肩も落ちてしまうこと、これはダメです。右肩が下がると必要以上にクラブがインサイドから下りてきて、インパクトでヒールに当たりやすくなるので、トップや右へのプッシュスライスが出やすくなるからです。
ユージ:右肩のポジションも大事なんですね。確かに、僕はダウンスウィングで右肩が下がる癖がありました。
高島:この修正方法で、意識して動かすのは「ダウンスウィングで手を前に出す」ということだけです。後の「クラブが倒れる」、「ヘッドが下がる」、「右ひじが内側に入る」というのは、手を前に出したら自然にできる動きなので、意識してやることはないわけです。
――高島は、「手を前に出す」ことによって、飛ばしに大事な動きが自然にできるようになるという。
高島:ダウンスウィングで手を前に出していくと、インパクトで勝手にローテーションが入るのがわかりますか?
ユージ:ああ、なんかわかります。
高島:これがいわゆるタメなんですよ。私の飛ばしの秘訣は、今言った「右肩を下げずに手を前に出していく」という動きの中にあるんですよ。
ユージ:そんな大事なこと、言ってくれちゃったわけですね。
高島:まあ、そのためには手首を柔らかく使わないといけないとか、まだやって欲しいポイントはいくつかあるんですけれど、それは次回お話ししますね。
ユージ:ぜひ。
高島:今回、ユージさんは飛ばそうとするとカット軌道になる傾向があるので、それを数発で修正をするために意識するポイントを話しました。この力んだ時の「カット軌道」はアマチュアの人に多い多い現象で、これはスライスだけじゃなくチーピンの原因でもあるので、この辺はぜひ参考にしていただけたらと思います。
ユージ:わかりました。これで大会の時には、6発中3発くらいはグリッド内に入れたいですね。大会に向けて、またよろしくお願いします。
――一般のアマチュアの人も、普段のラウンドで、スライスの曲がり幅が大きくなって、OBの連発が止まらないというような時のために、突然の「カット打ちスライスの修正法」を普段から練習しておくとよさそうだ。
撮影/野村知也
撮影協力/Ever Golf Studio