岩井千怜は昨年6月のプロテストに双子の姉・明愛とともに合格。4組目の双子プロにして、初のツアー優勝者となった。1打差の2位タイは海外メジャー帰りの堀琴音、勝みなみら6人。インスタートのいわゆる裏街道から猛チャージを見せた菅沼菜々がさらに1打差の8位に食い込んだ。2打リードで迎えた最終18番パー4、千怜の2打目がグリーンセンターをとらえたところで試合の大勢はほぼ決した。最後に1メートルのウイニングパットがカップに蹴られ、3パットのボギーとしたのはご愛嬌。優勝争いの大詰めを迎えても、ゆったりとしたスイングのリズムが崩れることなく、ショットの安定感も変わらなかった。18番グリーンには先にプレーを終えた明愛も駆けつけて祝福。互いに涙を流しての抱擁が印象的だった。
筆者が岩井ツインズの存在を知ったのは彼女たちが高校1年生だった2018年の「日本ジュニア」。現在の契約メーカーであるヨネックスの関係者から同社のクラブを使用する“期待の星”の父親として、雄士さんを紹介されたのがきっかけだった。そこで印象に残ったのが「同じペースで成長していってほしい」という父の願い。一人は全国大会、一人は別の地区大会に出るようなことになれば、サポートする家族の負担は増える。常つねに同じレベルで同じ大会に出続けてほしいといった内容だった。
もうひとつ、こちらは記憶があいまいなのだが、「明愛のほうが飛距離が出る」とか、「明愛のほうが小さいころから運動神経がいい」とか、そんな話を聞いたのだと思う。なんとなく、双子の岩井姉妹は姉の方が有望、雄士さんの心配は姉が先に行ってしまうことだと、勝手にイメージしていた。その後、2020年の「日本女子オープン」では明愛が14位でローアマを獲得(千怜は40位)。たった1試合の結果ではあるが、大きな舞台だけに筆者のそんなイメージはより強くなったのだった。
ただし、プロテスト合格後の成績を見ると、2人は父の願い通り同じレベルで成長を続けてきたようだ。昨秋にはステップアップツアーで双子による2試合連続優勝を達成。先に勝ったのは千怜だった。レギュラーツアーが主戦場となった今季は今大会前までほぼ互角の成績。そして、レギュラーツアーでの初優勝も千怜が先に果たす形となった。
優勝会見で千怜は姉の明愛について「ライバルではないけれど、互いに刺激し合い、高め合える存在」と話した。この思いはきっと2人に共通するものだろう。つねに近くにいる妹の優勝が刺激にならないわけがない。ステップアップツアーのように連続となるかは分からないが、明愛の初優勝も確実に近づいているはずだ。