ザ・ノースCGCといえば北海道の玄関口の新千歳空港から車で15分の高低差5メートルの立地に、フェアウェイとグリーンがオールベント芝という北海道ならではの広大な景色が広がるコース。フェアフェイをベント芝にした日本で最初のコースでもあり、アイアンでターフを取って打つ醍醐味を味わえるコースの先駆けの存在になっている。
この道30年以上というコースを管理する太田キーパーは、設計者の青木功や所属プロの渡辺司らとともにスコットランドの雰囲気のアウトコース、アメリカの雰囲気が漂うインコースを作り上げている。
「このコースの特徴はフェアフェイがベント芝。そしてフラットで広々とした景色に、風が吹く時にはやさしく、時には難易度を上げてくれます。グリーンも比較的大きめであまり傾斜がないように見えますが、ピン位置次第では傾斜が強くかかるようにもセッティングできます」(太田勉キーパー)
USPGAツアーの中継を見ると、フェアフェイに残る芝刈り機のカットした跡が美しく印象的だが、ここザ・ノースカントリーGCでも美しく刈られた芝のラインが見えることで、まるで海外のコースでプレーしているような錯覚に陥ってしまう。
ただ、北海道にも温暖化の影響があるようで、ここ5年くらいは気温が高くなっていて冬の積雪も130センチから70センチ程に減り年末年始の頃には雨が降ることもあるという。そうすると積雪で保護されていた芝が雨が降ることで凍りつき、凍害が出るようになってきていると太田キーパー。
4月上旬から11月中旬までシーズンを通して北海道ならではのコンディションを保つために、年2回のフェアフェイのエアレーションと普段からグリーンの状態をトーナメントとほぼ同じクオリティに保っているというから驚きだ。
広大な18ホールのフェアウェイのエアレーションを年2回実施する手間暇は、高齢化が進み人数も少なくなっているというコース管理の実情を考慮すると「最高のクオリティでプレーしてもらいたい」という気持ちを大いに感じさせる。
グリーンの刈り高は3.2ミリ。トーナメントではもっと短く刈り込むことも少なくないが、太田キーパーの手掛けるグリーンでは3.2ミリでも十分なスピードと転がりを見せてくれる。その秘訣をコース課の管理棟にお邪魔したので少しだけ紹介しよう。
18ホールのコースにしては芝を刈る機械の台数や種類が多く、どのマシンもメンテナンスがバッチリ行き届いていた。とくにズラリと並んだグリーンを刈る「グリーンモア」と呼ばれる機械は、人が乗って操作する乗用のマシンと手押しで芝を刈るマシンがあり、季節や芝の状態によって特注した刃の枚数の違うマシンを使用しているという。
中でもいちばん驚いたのは、砂を焼く施設が常設されているところ。春秋にグリーンに穴をあけ砂をまくことで新しい根を生やしたり酸素や肥料などを行きわたらせるエアレーションという作業、これはどのコースでもおこなわれているが、グリーン上に散布する砂は高温で焼いて滅菌し、ふるいにかけて粒をそろえたものを使用する。
この“焼き砂”は業者から購入したものを使用することが一般的だが、太田キーパーは焼き砂プラントを管理棟内に作ってしまった。そのためいつでも滅菌され粒のそろった砂を好きなだけ使えることでグリーンのクオリティを保つことに大いに役立っている。そういった管理手法をトーナメントウィークだけでなくシーズンを通しておこなっていることが、北海道ならではのプレーを味わえる秘訣になっているようだ。北海道ならではの雄大な景色と手入れの行き届いたベント芝のフェアウェイは、思い出に残る1ページを刻んでくれることだろう。
今年で17回目を迎える大会でプロの飛距離が伸びてきたことで、ティーグラウンドを移設するなどで対応し7178ヤード・パー72で選手たちを待ち受ける。3年ぶりの有観客となり、全英オープン帰りの桂川有人やプロデビューを果たす丸山茂樹の息子丸山奬王をはじめとした伸び盛りの若手と賞金ランク上位の比嘉一貴、星野陸也、稲森佑貴、今平周吾、堀川未来夢らの中堅との熱い戦いが期待される。