小澤:狩野さん、最近はどんな悩みがおありなんですか。
狩野:ドライバーが安定しないんです。ゴルフ始めた頃は、低いヒッカケが多かったんですけれど、最近は自分でも擦っているのが分かるような“ド”スライスに悩んでいます。
小澤:普段、コースではどれくらい飛びますか。
狩野:当たれば220ヤードくらいですけど、アベレージでは200ヤード前後です。
小澤:凄い、飛びますね。
狩野:当たれば、ですけどね。
小澤:ではさっそく、打って見せて下さい。
狩野:わかりました。相変わらずこの瞬間は緊張しますよね。
――緊張気味に打ったショットは、スカッとボールの頭を叩いてチョロ。
狩野:アレ、ちょっと待って、ちょっと待って!
小澤:可愛い(笑)。大丈夫です。マリガン(朝一のティーショットのミスは無罰打で打ち直せるという暗黙のルール)というのがありますから。
狩野:うわ、やさしい(笑)。
――気を取り直して打った打球は、ほぼストレートで飛距離は191ヤード。その後は、2球目はややスライス、3球目はほぼストレート。4球目はやや右に行ったものの距離は197ヤードと飛んでいる。
小澤:スウィング自体は軸もしっかりしていて綺麗なんですけど。じつはトラックマンのショットデータをみると、2球目、4球目のスライスと、ストレートだった3球目とでまったく違う結果となった数値があるんです。
狩野:え、何ですか。
小澤:ローポイント(最下点)です。この最下点がボールの手前にくるとB(Before)で、先にくるとA(After)になります。最初に右に行ったやつは8.6A、最後の右にいったやつが7.9Aなんです。それで真っすぐにいった3球目は0.8Aなんです。
狩野:本当に数値が全然違いますね。
小澤:ドライバーの場合はクラブの最下点がボールの手前、つまりBにくるのが正解なんです。Aの場合は、クラブが上から入ってきて最下点がボールの先にくるカット打ちになっているので、フェースが開いて当たりやすいんですよね。
狩野:それでスライスになるということですね。へぇ~、初めてしりました。
小澤:そこで、ドライバーの最下点をボールの手前にしてつかまった球を打ち、スライスを直していきましょう。
狩野:お願いします。
――狩野のスライスの原因がカット打ちにあると判断した小澤は、狩野のクラブの最下点の位置をボールの先のAからボールの手前のBにすることでスライスをドローに変えるという。
小澤:狩野さん、普段はアドレスで構えた時にボールのどの部分を見ていますか。
狩野:ちょっとボールを右斜めから見るようにしています。
小澤:ではそれを、ボールの手前2センチくらいの芝を見ながら構えて、そこを見続けて打ってみましょう。
狩野:わかりました。
小澤:構えてみて、どんな感じがしますか。
狩野:なんかボールの手前を打ちそうになんですけど。でもちょっと、打ってみます。
――1球目はやや左に出てローポイント1.4A、2球目もつかまったドローボールでローポイントは2.4A。
小澤:今、2球とも球筋がドローになっているじゃないですか。
狩野:え~! だって今、見る場所しか変えていないですよ。
小澤:それだけでローポイントは同じAでも数値が小さくなっていますよね。数値が小さくなるということは最下点がボールに近くになっているということですから、カット軌道がシャロー軌道になっているんだと思われます。このように同じ最下点はボールの先でも、数値が違うと球筋も変わってくるんですよね。
狩野:ローポイントって初めて聞きましたけど、それが変わるだけでこんなに打球が変わるんですね。
――ここで小澤がお手本ショットを披露。するとローポイント2.7Bが出た。
小澤:今、最下点が手前のスウィングができていましたよね。これは構える段階で左肩が上に、右肩が下に下がっているアドレスが作れているからです。この構えからスウィングをすると、最下点がボールより手前になりやすくなります。私の中では、この肩の傾斜がボールの発射台のイメージになっているんです。
狩野:肩のラインが発射台ということですか。
小澤:そうです。そうすると最下点が手前になってアッパーブローに打ちやすくなります。
――狩野もローポイントBを出すべく、小澤のアドバイスをもらったうえで改めて挑戦することに。
小澤:今度は目線をボールから4センチ離れたところを見ながら打ってみてください。
狩野:わかりました。
――1球目でローポイント1.8Bを叩き出した。2球目は1.3Aで球筋は綺麗なドローボール。3球目は1.5Bでこれも左につかまった球が出た。
小澤:Bが出ましたね。
狩野:え~、なんで!
小澤:ローポイントがBになると左方向の球筋になりますよね。
狩野:とくに打ち方は変えていないですよ。
小澤:そうなんです。ボールの手前で最下点を迎え、ヘッドがシャロー気味にアッパー軌道で入ってくることで球がつかまりやすくなるので、左方向への球筋になるわけですよね。
――最後はローポイントがBに移行し、球筋もつかまった左へのドロー気味のボールが出た狩野は、いきなりの成果に驚きを隠せない。
狩野:ずっとスライスの原因が分からなくて。見ている人からは「上から入っているね」とは言われるんですけど、そこから先の説明はしてくれないので、なんで上から入るのか原因が分からないままだったんですよ。
小澤:こういうトラックマンなんかを使ってデータが数値的に分かると、今の自分のスウィングの傾向が理解がしやすいですよね。
狩野:本当ですね。
小澤:狩野さんの場合、軸もしっかりしていてスウィングが安定しているので、形的なことをいじらずに球筋を変えようということで、今回は、最下点の位置を前にもってくることでスライスからドローに変えるということをやってみました。そのためにスウィング中の目線とボールから離して打ってもらい、クラブの最下点をボールの手前することで左に飛ぶ球筋になってきましたね。
狩野:本当に目線を変えただけなのに、あんなに球筋が変わるなんて驚きました。
小澤:この目線を変えるという方法は、絶対に左に行かせたくないというホールの場合、ボールをしっかり見ながら打てばローポイントがボールの先になるので、左を回避できる球が打てるスウィングになります。逆に右が嫌な場合は、今回やったようにボールの右側に目線を置くことで右サイドを回避できるショットが打てるので、ぜひ、身に付けてください。
狩野:わかりました!
撮影:野村知也
撮影協力:レッツゴルフ銀座