中国ツアーの賞金女王として日本ツアーに初参戦した2017年は平均220.01ヤード(91位)の飛ばない選手だったが、年々飛距離を伸ばし、今季は平均244.54ヤード(19位)と飛ばし屋に変身。今大会では継続して取り組んだトレーニングとスウィング改造の成果を飛距離だけでなく、スコアでも示した。いっぽう、大会連覇と今季初優勝を狙った吉田は一歩及ばなかった。
セキが優勝にたどり着くには2度の大きなピンチを乗り越えなければならなかった。13番パー5でイーグルを奪い、首位に立ったが、続く14番はボギー。15番パー4ではティーショットを右サイドのOBゾーンに打ち込みダブルボギーと大きく失速した。それでも、ここで諦めることなく、16番から連続バーディー。精神的な強さを見せ、優勝争いに舞い戻った。
また、18番パー4でおこなわれたプレーオフでは1ホール目の1打目を右の林に打ち込んだ。圧倒的に不利な状況だったが、吉田の3パットにも救われ、両者ボギーで命拾い。「吉田選手が3パットするとは思わなかったので、ラッキーだったかなと思います」。カップを切り直して行われた2ホール目では4メートルを沈めてバーディ。ともにプロテスト合格を目指す妹をもつ“お姉ちゃん対決”はセキに軍配が上がった。
中国人選手のセキだが、生まれは福井県で5歳までを日本で過ごしている。中国ツアーの次に日本ツアーを選んだのも「日本に親近感がある」というのがひとつの理由だった。日本語はペラペラとはいかないが、ゴルフの練習とともに日々、勉強も重ねて上達中。筆者は昨年の春に1時間ほど電話でインタビューをしたことがある。その際こちらの質問の意味が分からず、何度か一緒にいる母親が通訳する場面はあったが、それ以外はスムーズに会話ができた。電話で話ができるというのは外国語の習熟度としてはかなりのレベルだろう。
日本語が話せるというのは日本で人気を集めるには大きな要素。日本国内で行われている以上、ファンが日本人選手びいきになるのは自然なことで、これはゴルフに限ったことではない。そんななか、近年のツアーで日本人選手以上の人気を誇っていたのが、元賞金女王のイ・ボミ。彼女も流暢に日本語を操る。セキも同じように日本で人気者になれる可能性を十分に秘めた選手であり、今回の優勝はその一歩になるはずだ。
24歳のセキが掲げる次なる目標は「メジャー優勝」。さらにその先には米ツアー挑戦も見据えている。「若いうちに」と話しており、実力と自信がつけば、数年のうちに次のステージに向かうことになるのだろう。そのころにはセキの新たな挑戦を後押しする声援とともに、ファンから日本を去ることを惜しまれる選手になっているに違いない。