みなさんこんにちは。「スポーツボックス AI・3D」スタッフコーチの北野 達郎です。
今回は、今年のPGAツアーで大逆転の年間王者に輝いた、ローリー・マキロイの約10年前と現在のスウィングをスポーツボックスAIの解析をもとに比較してみましょう。
マキロイのスウィングにおいて、スポーツボックスで分かる過去と現在のスウィングの大きな違いは2点あります。まず1つはトップの位置です。各項目のデータからご説明しますと、2011年頃のマキロイは、CHEST(胸)のターンが98度、PELVIS(骨盤)のターンが35度、HAND(両手)のSWAY(左右の移動)はマイナス6.9インチ(右)と表示されています。続いて今年のマキロイは、CHEST(胸)88度、PELVIS(骨盤)40度、HAND(両手)マイナス13.3インチ(右)と表示されています。
この2つのデータからわかることをひとことで表すと、「昔のほうがトップでの捻転差が大きく、手が深く入っている」と言えます。詳しくご説明しますと、手が大きな半径を描いて深く入るほどマイナスの数値は減り、逆に手の描く半径が浅くコンパクトな位置に収まるとマイナスの数値はあまり減りません。つまり「2011年頃のスウィングの方がトップの位置は深い」と言えます。
また、この手の深さと胸のターン量には関連があります。例えばトップが大きく深い位置まで入るブライソン・デシャンボーは胸のターンが115度と大きく、逆にトップがコンパクトに収まるジョン・ラームの胸のターンは77度とかなり浅めです。
マキロイの話に戻りますと、以前は胸のターン98度、現在は88度と約10度コンパクトになりました。若手の頃はトップでシャフトがクロスして、地面と平行の位置よりクラブが深く入ってましたが、今はクロスもほとんどなくなり、シャフトが地面と並行より手前に納まるようになりました。以前デシャンボーが飛距離を伸ばした際にマキロイは、さらなる飛距離を求めるあまり調子を崩した時期がありましたが、今のマキロイのスウィングからは、飛距離だけでなく方向性を重視していることが垣間見えます。
続いて2つ目の昔と今の違いはインパクト〜フィニッシュでのスウェイ量にあります。
もともとマキロイは左足にしっかり体重を乗せて打つタイプですが、2011年以上に今のほうがより左へシフトして打っているのがインパクトの写真とデータからわかります。胸、骨盤ともに左へのSWAY(移動)量が増えています。とくに特徴的なのは、下半身だけでなく胸も左へ動いている点です。通常ドライバーのスウィングでは、インパクトにかけてインサイドアウト+アッパーブローに打ちたいので、上半身はなるべく左足寄りに突っ込まずに右足寄りに残したほうが望ましいと言われます。しかし現在のマキロイの場合、あえて胸も左足側へシフトして、アイアンに近いスウィングにすることで先述の方向性を高めていると言えます。フィニッシュの写真も比較すると、以前の方が胸が右に残る逆C寄りのフィニッシュでしたが、今は左足の上に胸も位置するI字に近いフィニッシュを取るようになりました。
また、このスウィングの変化に伴うクラブ軌道の変化はトラックマンでのデータにも現れていて、以前のマキロイはドライバーでのクラブパスは+4度前後のインサイドアウトでしたが、現在に近くなるにつれてドライバーでもクラブパスが0に近い数値で打っているデータが増えました。マキロイと言えばもともとドローヒッターのイメージでしたが、今はドライバーでフェードも多用するようになったのは、この辺りのスウィングの変化によるものが大きいです。
いかがでしたか?今年は全選手で唯一全メジャーでトップ10入りを果たしてPGAツアーの年間王者に輝くなど、充実のシーズンを過ごしたマキロイのメジャーグランドスラムは来年こそ見られるのでしょうか?円熟期に入ったマキロイのプレーに今後も注目しましょう!