また新しいヒロインが誕生しました。昨年のプロテストに合格したばかりの19歳のルーキー、川﨑春花選手です。最終日に8バーディ、ノーボギー、とくにバックナインを6バーディの64と爆発し史上最年少の日本女子プロ選手権の優勝者に名を刻みました。
優勝会見では、「優勝とか差とか考えていなかった。⾃分のできることを精⼀杯しようと思っていた。緊張よりも⽬の前の⼀打に必死だったんで、緊張はあまりなかった」と話しましたが、しっかりと振り切るスウィングでピンを攻め、パットもことごく決めゾーンに入ったプレーで後続のポイントランク1位の山下美夢有を突き放すプレーは圧巻でした。
今季3試合のキャディを務めた栗永遼プロキャディに話を聞くと、川﨑春花選手が中学生の頃に南秀樹コーチのアカデミーを訪れた際に会ったことがあり、そのときに南コーチとアプローチとパターの距離感や方向性がずば抜けていて近い将来に上がってくると話していたと教えてくれました。
「昨年のプロテストに合格したので、今季のツアー出場に合わせてキャディを務める機会をもらっていましたが、少し前まで腰痛があって思い切りのいいスウィングができないでいました。マネジメントや攻め方を学びながら、続けてきたトレーニングや体の使い方がよくなったことでショットがよくなってきていました」(栗永遼キャディ)
ゴルフの調子に合わせてツアーに慣れて来たことも大きいと栗永キャディ。「結構気を遣う選手なので、やっぱり19歳のルーキーですから出場選手はみんな年上の先輩になりますし、大人のプロキャディにも気を遣っていましたね。それが少しずつ慣れて来ていたところにステップアップで優勝できたので自信も取り戻していました。飛距離も出るほうなのでこれからの活躍が楽しみです」
では今大会で7位だった飛距離(247.625ヤード)を誇るスウィングを見てみましょう。
写真は今季初出場3月の「Tポイント×エネオスゴルフ」で撮影の連続写真になります。ごく自然体でバランスの取れたアドレスの姿勢から、胸椎の部分がしっかりとねじられたトップというのが見て取れます(画像A左)。股関節に支持された骨盤をの回転量に対して肩の回転量が大きくなるのは、みぞおちから首の付け根までの胸椎の部分をしっかりねじっているから。背骨の構造上ねじれるのは胸椎の部分で、腰椎にかけてはほとんどねじることはできませんので胸椎の部分、つまり前傾をキープしたまま胸をしっかり回すことでテークバックから上半身と下半身の捻転差を作ることができています。
画像Bのダウンスウィングを見ても、飛距離の原動力となる胸椎と骨盤の捻転差がよく見えています。もう一つ、左の首の付け根がボールよりもターゲット方向に突っ込んでいません。いわゆる「ビハインド・ザ・ボール」がしっかりと守られていることで振り子の軸ができ正確で再現性のあるインパクトへとつながっています。
テークバックで上半身と下半身が同じ回転量になってしまうと、ダウンスウィングで左へ突っ込んでしまいビハインド・ザ・ボールもできなくなってしまいます。ここでのキーワードは川﨑春花選手のようにテークバックで前傾角に従って左肩が下がるように胸椎の部分をねじることで、上半身と下半身の捻転差作り飛距離の原動力とすることです。
今大会で同じプロテストにトップ合格した尾関彩美悠のキャディを務めていたという栗永キャディは、29位タイで終えたことに対して同期の優勝を祝福しながらもかなり悔しさをにじませていた尾関選手を見て「尾関選手にも火が付いた」と感じたそうです。同じく同期で4位タイで終えた佐藤心結選手や竹田麗央選手も同じ2003年生まれと刺激を受けたことでしょう。そして桑木志帆、佐久間朱莉、内田ことこら2002年生まれの一つ年上の世代にも火をつけることになったことでしょう。
川﨑春花選手の活躍によって残る後半戦でも新たなヒロインが誕生することになるのではないでしょうか。
※2022年9月14日8時55分 文章を一部修正いたしました。