2020年にR&Aにより発表された「ゴルフと健康」に関するレポートによるとゴルフが健康に与えるプラスの影響は多々あり、とくにゴルファーの寿命はゴルフをしていない人よりも5年長いこと、糖尿病やうつ病、認知症などの病気に有効な効果があること、適度な身体活動で持久力や心肺機能と代謝の向上を促すとされている。
R&Aのアジア太平洋ディレクターのドミニク・ウォール氏によるとR&Aでは様々な研究結果からゴルフが健康に与える影響を高く評価し、より一層のゴルフの普及、振興に予算を投じていく考えを示した。
そしてもう一つは、「女性とゴルフ」に関して女性を取り巻くゴルフ環境を改善し女性ゴルファーを増やすことに積極的に取り組むというもの。ゴルフの歴史の中で1754年に設立されたR&Aが女性会員を受け入れたのは260年後の2014年、マスターズが開催されるオーガスタナショナルGCが女性会員を受け入れたのも2012年、今年全英女子オープンを初開催したミュアフィールドは2016年に女性会員を受け入れる投票をおこなったものの否決され、全英オープン開催コースから外された。のちの2017年の再投票により女性会員が認められ全英オープン開催コースのローテーションに復帰したことからも、長く女性を取り巻くゴルフ環境に改善の余地があったことは明らか。そういった歴史を踏まえ新たにゴルフを楽しむ女性に対するゴルフ振興を進めていくことを進めている。
JGA(日本ゴルフ協会)でもそれまではアマチュア競技の主催団体がおもな役割ではあったが、2021年4月の定款変更により競技ゴルファーだけでなく一般アマチュアゴルファーも対象にゴルフの普及・振興を目指すことになり、「JGAゴルフ振興推進本部」を設置し環境の整備や底辺の拡大を推し進めることを実施するという。
ゴルフ振興事業の一つの柱として「ゴルフと健康」事業を位置づけ、もう一つの柱に「女性とゴルフ」事業を位置づける。それぞれ部会を設け広報活動をするというから、目にすることも増えることだろう。
実際の活動はこれからというところだが、ゴルフ人口を増やすための土壌はすでにある。大学の体育授業の選択科目でゴルフを選択できる大学は全国で500以上あり、ゴルフ授業を選択している生徒は年間数万人に上っている。写真は武蔵野美術大学のゴルフ授業のものだが、1クラス30名程度の授業が週に5クラスあり人工芝のサッカー場でプラスティックボールで実技を練習し、近隣のコースで3ホールのゴルフ体験を年に数回実施しているのだ。
大学在学中にゴルフに触れる機会を自ら選択してくれたゴルファー予備軍を卒業後にゴルフを楽しむゴルファーへと導くことができていないのは、ゴルフ業界全体が取り組まなければならない大きな課題だろう。ぜひJGAが先頭に立って初心者ゴルファー向けの環境改善に取り組み全国に広げて欲しいところだ。