何事も想定しておくことが大事
「一喜一憂」。目の覚めるようなスーパーショットが出たと思ったら、記憶から消し去りたいようなひどいミスショットが出たり……、ゴルフをしていれば、誰しもそんなゴルフの神様のいたずらに翻弄されるもの。
ビギナーの頃は、ワンショットごとに盛大に喜んだり、大いに嘆いたり、喜怒哀楽をそのまま出して文字通り「一喜一憂」し、それ故に「楽しそうでいいなあー」などと周囲から言われたりしたものです。しかし経験を積めば積むほど、そうした喜怒哀楽を出しっ放しにしていては、安定したプレーは難しい、ということに気付いていきました。
ゴルフを楽しむのが主目的というエンジョイ派なら、ナイスショットには歓声を上げ、仲間と喜びを分かち合う、というのも大きな楽しみのひとつかと思いますし、シリアスゴルファーでも周囲から「ナイスショット!」の掛け声を貰ったら、笑顔で返すことも必要なことと思います。また、いいショットが出たときには、ポジティブな流れに自分を上手く乗せていくことも大切かと思います。
問題なのはミスをした後のリアクションです。大きな声で嘆いたり、舌打ちをしたり、思いっきりふてくされたり……。そうしたリアクションを表に出していては周囲の雰囲気を壊すだけでなく、ミスを引きずって自分のペースを壊してしまうことにもなります。
こう考えていくと、4時間を越える長いプレー時間の中で、感情をどうコントロールしていくか、というのはとても難しい問題ですが、今回は自分自身の経験も踏まえて考えていきたいと思います。
こういうテーマになると真っ先に頭に浮かぶのが、アマチュアの名手、中部銀次郎氏の名言です。中部氏はプレー中に起こるさまざまな事柄に「明敏に反応せず、やんわりとやり過ごす」とおっしゃっていました。いいことにも悪いことにも、です。
たとえばラウンド中、思いがけず長いバーディパットが入ってしまって、「えっ、このままいくとベスト更新かも」とか、逆に「あー、苦手なホールでやっぱり大叩き、今日はもう終わった」などなど、起こってしまった結果に対し、心は激しく反応してさまざまな感情を生み出します。
また、その感情の変化がプレーのリズムをかき乱し、ミスを誘発します。中部さんは、そうした結果をしっかり受け止めつつも、サラッとやり過ごす。そうすることで、プレー中の感情をフラットに保ち、安定したプレーを可能にしていたのです。
そうは言っても実践するのはなかなか難しいですが、自分自身は何年か、この言葉を胸にプレーするようにしていました。すると、「やり過ごす」ためのコツというか、ポイントが少しずつ分かってきました。
自分が気をつけていたのは「何事も想定しておく」ということです。思いがけずいい結果が出て、激しく喜ぶ。 思いがけずシャンクやチャックリが出て大叩き。フェアウェイど真ん中に飛んだナイスショットがロストになる。乗れば御の字という難しいアプローチが奇跡的に寄る。どれもプレーヤー自身からしてみれば「思いがけない」ことですが、ゴルフというゲームでは、まあまあよく起こること。起こる可能性がゼロでは無い事柄です。
そうした思いがけないことが起こるからゴルフは楽しいし難しいのです。こうしたさまざまな事態が起こったとき、「えっ どうしよう!」と思うだけでなく、「あー、こういうことも起きるよねー」と冷静に受け止める「準備」を心の中にしておくように心掛けました。「何事も想定内」と思うことで、少しずつ冷静さを保てるようになっていったのです。
例えばティーショットを曲げて、林の中に向かう時、「ああ、ボール見つかるかな? ロストになったら嫌だな」と不安に思うだけでなく、「ロストになる可能性、木の根っこにくっついてアンプレヤブルになる可能性、低い球で脱出するショットが求められる可能性」などなど想定される事態に備えることで不安に思う気持ちを抑えることが出来ます。
また、残り3ホール、パーを続ければベスト更新などという状況だったとします。「ああ、こういう時の自分は大抵、緊張して一つや二つのミスは出るよね」と覚悟、想定しておくことで、ミスが出ても感情が不安定にならず、冷静に対処出来るようになります。「何事も想定内」。結構役に立ちますよ。
もう一つ、感情をフラットに保つために気をつけているのは、歩くリズムや姿勢です。ミスが続いて感情が滅入ってくると、リズムや呼吸が乱れ、ついうつむきがちに地面を見て歩いてしまったりします。意識して姿勢を正し、胸を開いて、大きく腕を振ってリズミカルに歩く。これだけで気分を整えることが出来ます。
「プレー中の感情の起伏を抑える。」すぐに出来るようになることではありませんが、こうした意識を持つことで、少しずつですが、「一日を通した安定したプレー」に繋がると思います。ちょっと試して頂けたらと思います。