「MT-28」「MTIウェッジ」など数々の名器を世に送り出し、日米両ツアーで多くのプロ支給品を手がけたクラブ設計家、宮城裕治氏が流行に惑わされないクラブ選びとクラブ設計の真実をクールに解説。今回はサンドウェッジの適正ロフト角について教えてもらった。

みんゴル取材班(以下、み):プロの大多数はロフト58度のウェッジを使うか、もしくは56度とその下に60度を入れています。これに対してセット物のサンドウェッジは56度設定。やはりアベレージゴルファーには58度以上は難しく、56度が適しているということでしょうか。

宮城:その人の技量や寄せ方にもよりますが、アプローチの苦手な人や基本に忠実にピッチエンドランで寄せたい人には56度を超えるウェッジは必要ありません。

画像: いまはいろんなものが選べる、SWのロフトだが何度を選ぶのが正解なのか?

いまはいろんなものが選べる、SWのロフトだが何度を選ぶのが正解なのか?

み:やはり56度のほうがやさしい?

宮城:試しに30から40ヤードくらい先をねらって、56度と58度で5球ずつ打ってみましょう。56度のほうが圧倒的に寄るはずです。これはロフトが立っているほうがフェース面を広く使えるためです。56度をハンドファーストで打てばスコアラインの5本目くらいまで使えますが、58度や60度になると当てる場所がライン2本分くらいしかなくミスをする確率が高くなります。

み:それでもバンカーのアゴの近くとか球を上げる場合は58度のほうがやさしいのでは。

宮城:56度もフェースを開けば60度くらいになるので大丈夫です。ぼくは逆に球が前に飛ばない女性用のサンドウェッジを55度で作っています。それでもなんの問題もありません。

み:ではプロがロフトが多いウェッジを使うのはなぜでしょう。

宮城:フィル・ミケルソンは60度とか62度のロブウェッジでフワッと寄せているイメージが強いけれど、それを使うのはとんでもないラフから打つような場合に限られています。花道からは56度で打っているし、本人からもアプローチのエースクラブはジュニアの頃からずっとロフト56度のバウンス12度だと聞きました。タイガー・ウッズも52、56、60度の3本を入れていますがけっこうな頻度で56度を使っています。

み:56度はなんとなく素人くさく感じていましたが、ミケルソンとタイガーが多用していると聞いたらイメージが変わりました。

宮城:そもそも一般営業のゴルフ場で12フィートの速さのグリーンなんてまずないので、ロフトの寝たウェッジを使う必要はまったくありません。さらにいえば、アイアンセットのPWとの間隔が開きすぎないのも56度のメリットです。PWのロフトが44度ならPW以下を2本派なら50、56度、3本派なら48、52、56度にすれば寄せがシンプルになります。

み:すでに58度を買ってしまった人はどうすればいいですか。

宮城:どうしても58度を使いたい人や持てあましている人にはロフトを1度立てて57度で使うようにおすすめします。その1度で球がつかまるようになるし、ラフからのだるま落としもなくなります。とくにフェースを開いたときにやさしさを実感できますよ。

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