予選ラウンドは西郷真央、アマチュア馬場咲希選手と同組で多くのギャラリーを引き連れ、初日をイーブンパー9位タイ、2日目は3オーバーで19位タイで終えると「硬くなっていた。もう少しインサイドアウトに振るようにしたら真っすぐに行きました」と3日目を2アンダーで3位タイと優勝戦線に浮上。最終日も思い切りのいいスウィングで前半で5バーディを奪い、13、14番と難ホールをボギーとしますが17番を値千金のバーディとして優勝を手繰り寄せました。
オープンスタンスでインサイドアウトに振り、ストレートに近いドローボールで攻めるスウィングを見てみましょう。
初めて見た人は驚くかもしれませんが、ターゲットに対してかなり左を向いたスタンスの向きで構えます(画像A左)。クラブの軌道とフェース向きが揃っていて概ね芯に当たればボールは真っすぐに飛びますが、勝選手はオープンスタンスに構えることでクラブ軌道をターゲットに対してわずかなインサイドアウト軌道で振っています。
ターゲットラインに対し平行に立ち、体を中心とした円軌道でクラブヘッドを振るとするなら、インサイドアウトに振るにはスタンス向きを右に向けることがセオリーではあります。しかし、再現性が高く飛距離も出るならセオリーにとらわれない立ち方も大いにアリだということを改めて示してくれました。
勝選手の場合は、ターゲットラインに平行に構えるとインサイドアウト軌道が強くなり過ぎてしまうのでしょう。スタンス向きを左に向けることでスウィングの面を左に向け、軽いドローボールの打てる最適なインサイドアウト軌道に調整しています。
そして気持ちよく振れて狙い通りに打てるスタンス向きの度合いを、その週やその日の調子に合わせて調整できる対応力も高いものがあります。それはコーチを置かずに自分で試行錯誤し、仮説と検証を繰り返して自分のプレースタイルを作り上げてきたことが強みになっています。
画像Bを見るとアドレスでのシャフトの位置に赤線を引くと、ダウンスウィングでこの線の上にクラブが乗り、線の少し下をヘッドが通りインパクトを迎え、線の上にヘッドはつまり、インサイドアウトの軌道で抜けていくのが見て取れます。
もう一つ、勝選手のストロングポイントはパーオンホールの平均パット1位のパッティングにもあります。テンポがいつも一定でパターの芯を外さないパッティングは速いグリーンでも非常に安定していましたね。
難コンディションの中で高い技術を見せつけたシン・ジエ、今季初優勝を狙った吉田優利、抜群の安定感でポイントランクを独走する山下美夢有らが上位で争い、そこにアマチュアの馬場咲希も加わり大いに盛り上がりました。こういった心技体を試される難コンディションのセッティングを制した勝選手も昨年の渋野日向子、古江彩佳選手に続いて、年末の米女子ツアーの最終予選に挑戦します。「迷わず行けよ 行けばわかるさ」。きっと通過して来年は米女子ツアーで活躍することでしょう。