インドアゴルフスタジオでレーダー式弾道計測器を使用し正確なデータ計測を実現するために、「プロV1」「プロV1X」と同等の性能でルール適合した専用ボールを開発。プロゴルファー・中村修が試打したレポートをお届け。
レーダー式弾道計測器のトラックマンでデータ計測した際にボールデータを表示する数値が斜体になっているケースがあることをご存じでしょうか? それは実測値ではなく、さまざまなデータから導き出された計算値であることを示しています。インドアゴルフスタジオにおいては、打球位置からネットやスクリーンまでの距離が短いためにボールのスピン量を正確に計測することができない場合がありました。そのため、正確なデータ計測をするためにアルミ箔のシールを貼ったボールを使いレッスンやフィッティングに使用していました。しかし、ネットやスクリーンに擦れてはがれてしまうことも多く、正確なボールデータを計測できないこともありました。
そこでレーダー式弾道計測器のメーカーのトラックマンの協力のもと、タイトリストはRCT(レーダーキャプチャーテクノロジー)ボールを開発し、プロV1とプロV1Xのカバーの内側にレーダーに反応する反射マーカーを装備することで99%の信号を補足できるようになったといいます。しかもボールの性能はプロV1とプロV1Xとまったく製造過程も素材も同じでパフォーマンスも同様だというので、例えば、クラブフィッティングでの変化やレッスンの効果もより正確に視覚化できることにつながります。
実際にプロV1XRCTボールとノーマルのプロV1Xを打ち比べてトラックマンデータを比較してみました。打感はまったく変わらずにどちらを打ったか感じ取ることはできませんでしたが、データ画面を見ると一目瞭然。ノーマルのプロV1Xではバックスピン量4840rpmは斜体になって表示されています。この数値は、例えばクラブスピードや入射角、ダイナミックロフト、クラブパス、フェースアングルといったクラブデータとボールスピード(初速)などのボールデータから導き出された計算値であることを意味しています。
次にプロV1XRCTボールを打ってみると、スピン量は5039rpmと他のデータと同じく実測値として表示されています。約200rpmの違いですがスピン量が変わればボールの高さや飛距離、ランの割合などほかのボールデータにも影響するに違いありません。
撮影協力してもらった4プラスフィッティングラボの吉川仁フィッターに話し聞きました。
「バックスピン量の数値の単位rpmは1分間に何回転しているかを表しています。7番アイアンでをアウトドアで打ち、インパクトから着弾までが5秒程度だとすると5000rpmの12分の1として415回転くらいが実測値になります。インドアだとスクリーンまでの距離が短いのでスクリーンに到達する時間が0.1秒とすると8回転くらいしか回転していない計算になります。ドライバーだと半分の回転数になるので実測することは難しくなり計算値になることが多かった。ところがRCTボールだと正確な数値が取れるので、シャフト交換したりロフトを変えたりした効果がより実戦に近くなりフィッティングでのエラーが起こりにくくなっています」(吉川仁フィッター)
続いて、とくに数値が取りにくいことが多いロブショットでは、ノーマルプロV1Xでのスピン量は斜体の4280rpmに対してRCTボールだと8336rpmと大きな差が見て取れます。ノーマルショットではこれほどの差は出ませんが、練習やフィッティングで勘違いするケースもあるかもしれませんね。
ちなみに点線表示は計測できなかった項目で、レーダー式弾道計測器の場合フェースを極端に開いたロブショットのような特殊なケースではよくみられます。
ここまで正確に計測できるようになったRCTボールですが、耐久性もノーマルのプロV1、プロV1Xと同じなのでインドアスタジオのネットやスクリーンの素材によって表面がささくれたり痛んでくるとレーダーがそこに反応するようになってきます。ヘッドスピードや環境にもよりますが、ドライバーで500ショットくらいで計測データに影響数値が出ることもあるようです。
レッスンの効果をデータで見ることも大切ですが、正確なフィッティングの効果を視覚化してくれると感じました。ノーマルのプロV1よりも少し高い料金になっていますが、1本数万円するシャフトをフィッティングする際には持参してもいいかもしれませんね。
撮影協力/4プラスフィッティングラボ