ゴルフでも武道でも達人の域に達する人は、自分の型を持っているように見えるのは何故だろう。自分に合った型を見つけられれば、上達への道がきっと切り開けるはずだ。そこで廣戸総一氏の提唱する「4スタンス理論」をゴルフに当てはめ、ツアープレーヤーも指導する西野貴治プロに「4スタンス理論」を使ったゴルフ上達のカギを教えてもらおう。

体の動かし方の特徴によってゴルファーを4タイプに分け、それぞれに合った体の動きを行うことでケガのない動きやスムーズな上達を促す「4スタンス理論」。じつは単なるタイプ分けのレッスンではなく、「軸」の概念に基づき、自然でスムーズな体の使い方で効率のいいスウィングを目指すところに本質がある。

画像: 面の入れ替わる瞬間がインパクトの瞬間。タイプによってその位置は右股関節前と左股関節前の違いがある(写真左、ビクター・ホブラン、右ザンダー・シャウフェレ)

面の入れ替わる瞬間がインパクトの瞬間。タイプによってその位置は右股関節前と左股関節前の違いがある(写真左、ビクター・ホブラン、右ザンダー・シャウフェレ)

「ザ・ロイヤルゴルフクラブ」内の「廣戸道場」でプロや研修生を指導し、自身プロゴルファーでもある西野貴治氏に、最新の4スタンス理論について連載形式で教わっていく。

今回は、前回説明してもらった「面の入れ替え」について、さらにイメージが磨かれ、動きがよくなるエクササイズを紹介してもらう。それは「ダブルサークリング」と呼ばれ、4スタンス理論の重要なエクササイズ「コア6」の一つでもある。スウィングのどのタイミングで面を入れ替えるか、そしてその際の軸の作り方、軸シフトのタイミングなどが体感できる。

具体的な動きを説明すると、まずトップ・オン・ドームで立ったら、胸の前で手を合わせ、指先を真上に突き上げるように腕を伸ばしていって腕が伸びたら手のひらを正面に向ける。つま先の前にある壁に手のひらが触れているようなイメージだ。

ここから手のひらで架空の壁をなぞるようなイメージで体幹を柔らかく使い円を描くように旋回させる。ゴルフスウィング的な動きで考えれば、自分から見て時計回り、右手方向にスタートするのがダウンスウィングに相当する動き。

手のひらをつねに正面を向けたまま円を描こうとすると、あるポイントで動きが行き詰まるので、そうしたら腕を180度回旋してまた手のひらが正面に向くようにし、スタート地点の頭の上まで円を描き切ろう。この腕を回旋させる動きがスウィング中の「面の入れ替え」だ。

画像: トップオンドームで立ち、手のひらを正面に向けたまま架空の壁をなぞるように旋回させる「ダブルサークリング」は面の入れ替えを体感できる

トップオンドームで立ち、手のひらを正面に向けたまま架空の壁をなぞるように旋回させる「ダブルサークリング」は面の入れ替えを体感できる

「この腕をひっくり返す瞬間は、腕だけでなくじつは軸シフトも自然に生じています。ゴルフスウィングでも、『入れ替え』は単に腕をターンさせるのではなく軸シフトと連動して面が入れ替わる必要がありますが、このエクササイズをおこなうことによって、その動きとタイミングが自然と身についてくるんです。入れ替わりの瞬間が、インパクトの瞬間。『ダブルサークリング』によって、自分自身の『間』やインパクトのタイミングを知ることにもつながります」(西野さん)

画像: 左股関節前で面の入れ替えをするのはAタイプ

左股関節前で面の入れ替えをするのはAタイプ

「ダブルサークリング」をおこなっていると、自然な入れ替えが左股関節前で起こる人と右股関節前で起こる人、大きく分けて2タイプの人がいる。実は4スタンス理論によるタイプ分けではAタイプが前者、Bタイプが後者になるという。プレーヤー自身が自分がA・Bどちらのタイプなのかをことさらに意識する必要はないが、入れ替えのタイミングには個人差があり、自分にとって自然なタイミングを知ることはスムーズで効率のいいインパクトにつながるから、自分の自然な入れ替えのタイミングは知っておいて損はない。

画像: 右股関節前で面の入れ替えを行うBタイプ

右股関節前で面の入れ替えを行うBタイプ

「ちなみに『手打ち』とか『力んでいる』と指摘されがちなスライサーは、この入れ替えを手がてっぺんから下がり始めた直後におこなっているんです。やってみるとわかりますが、手のひらの軌道が目の前の『面』をなぞることができず、右上から左下に歪んだアウトサイド・イン軌道にならざるを得ません。ですから『ダブルサークリング』をしっかりやって入れ替えのタイミングが整えば、スライス矯正にも効果は大きいですよ」(西野さん)

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