前週は米カリフォルニア州でトーナメントに出場していた古江の帰国は火曜日の午前4時。羽田空港から直接会場入りし、練習ラウンドをおこなう強行軍だった。それでも、初日66、2日目65とビッグスコアを並べ、3打差をつける堂々の単独首位で最終日を迎えた。このまま独走するかと思われたが、前半は5番で奪ったのが唯一のバーディとやや苦戦。「このままバーディが取れなかったら追いつかれるなと思っていました」。そんな予感が的中し、終盤で岩井明に逆転を許した。
それでも、ここからが今大会に強い古江の真骨頂。16番パー5で2打目をグリーン奥のカラーまで運び、11ホールぶりのバーディで追いつくと、最終18番パー4では3メートルを沈めてバーディーフィニッシュ。先にホールアウトしていた岩井明を1打差で振り切った。グリーン手前に深いバンカーがある18番は大会きっての難ホール。古江も過去に一度もバーディを奪ったことはなかったが「プレーオフだけはしたくなかった」と勝負強さを発揮した。
ボギーが少ないことも古江の強さのひとつだが、今大会では特に少ない。アマVの2019年が1ボギー、昨年は2ボギー(36ホール)、連覇の今年はボギー1つに抑えた。このプレースタイルはジュニア時代にコーチでもある父・芳浩さんから「バーディを取っても、ボギーを打ったら同じこと」と指摘を受け、ショートゲームを磨いて身につけてきたもの。今季は米ツアーでプレーし「上げるアプローチの練習をする割合を増やしたので、自信を持てるようになりました」。最終日の6番では米国で磨いてきた技でふわりと上げてパーをセーブした。
芳浩さんはなかなか試合に同行できていないが、その分、思いはボールに込められている。古江が使用するボールにはカラフルな7つの星が描かれており、これが驚いたことに印刷ではなく、すべて手書き。ボールは通常、契約メーカーから米国の試合会場に直接送られるが、古江の場合は自宅で一度、芳浩さんが筆を入れてからの発送となる。年間で使用するのは「おおよそ60~80ダース」(ブリヂストンスポーツのツアー担当)。1年間で約800個のボールに7つの星とグリーン上でラインを合わせるための線を入れるという地道な作業は、娘の活躍を願う父でなければできることではないだろう。古江ももちろん、ボールを見るたびに父の教えを思い出しているはずだ。次戦もディフェンディングチャンピオンの「NOBUTA GROUPマスターズGCレディース」。地元・兵庫での大会だけに今度は父の前での連覇を目指す。
写真/大澤進二