「富士通レディース」は古江彩佳選手の強さが際立った展開となりました。スウィング、アプローチ、体のコンディションや調整力、そしてスタミナ。ツアーを転戦する選手として、古江選手の総合力が底上げされた印象を強く持ちました。
昨年に引き続きキャディを務めた森本真祐キャディに話を聞きました。
「火曜日朝に帰国して昼から練習ラウンドをしましたが、毎日日没までしっかりと練習し、日曜日の最後のパットまで集中力を切らさない体力、スタミナには本当に驚かされます」(森本真祐キャディ)
最終日はショットでチャンスを作るものの、パットがひと筋ズレて入らない。前の組の岩井明愛、新垣比菜がスコアを伸ばす展開に森本キャディは「ギャラリーも前の組みに移動して行きますし、正直、焦りを感じた」と振り返ります。しかし、その中でも落ち着いていた古江選手に成長を感じチャンスは必ず来ると思っていたと森本キャディ。
岩井明愛と同スコアで迎えた最終18番ホール、上りを入れて174ヤード地点からは、グリーンをオーバーする前の組を見て「アゲンストはない。右からの風と読んで6UTを選びました」(森本キャディ)
グリーンセンターを狙った1打は風に乗って左奥のピン手前3メートルにナイスオン。「プレーオフになった昨年の最終ホールのバーパットとほぼ同じ位置でした」というウィニングパットを決め、連覇を手にしたのです。では安定感抜群のドライバーショットを見てみましょう。
古江選手のスウィングの特徴は左手の甲が正面から見えるストロンググリップにあります(画像A)。左前腕を半ば内側に回した状態で握るストロンググリップはフェースの開閉が少なくなるメリットがありますが、開閉を使って飛ばすことはできないので、それを補う体の回転力が必要になってきます。
ティーアップしたドライバーではテークバックの初期に右の股関節を軸を決め、不変のテンポでその軸をキープしたままトップを迎えます。左ひざが内側に入らないことで体の背部の筋肉がしっかり伸ばされ、縮もうとする伸張反射を使ってダウンスウィングに入ります(画像B)。
インパクト前後でも左手の甲はアドレスと同じように正面から見えています。スクェアグリップやウィークグリップのように腕を回旋させる動きが入らないことも安定した方向性につながっていることでしょう。ティーアップしたボールを打つドライバーショットでは顕著になりますが、右股関節を軸にしたまま切り返していて、左へ大きく踏み込むようなタイプではないことが見て取れます(画像C)。
現地取材に恵まれた4月の「シェブロン選手権」では持ち味の方向性の良いドライバーが乱れ調子を崩していましたが、そういう時期を乗り越え米女子ツアーのルーキーイヤーにスコットランドで勝利を挙げられたのは、自分のプレースタイルにマッチしたスウィングを磨き上げてきらからこそ。
今週も2週連続で連覇のかかる地元で開催の「NOBUTA GROUP マスターズ GC レディース」に出場します。成長した姿を地元のファンに見せてくれることでしょう。