千葉・習志野CCで開催されたPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」では、選手のプレーを妨げないルール設定がされたうえで、ギャラリーの動画(一部エリアでは写真も)撮影が許可されていた。日本のツアーではあまり馴染みのないこの撮影文化はギャラリー、そして選手たちにどう受け入れられた? スポーツライター・森伊知郎がレポート。

10月13~16日まで千葉・習志野CCで開催されたPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」の中継を見て、多くのギャラリーがスマホで選手のプレーを撮影していることに驚いた人もいるのではないだろうか。

アメリカではおなじみの光景も、日本のスマホは撮影時に音が出るためにゴルフトーナメントでは写真、動画ともに撮影はご法度、とのイメージがあるが「ZOZO」では動画の撮影が認められていた。

ギャラリー向けのお願いとして記されていたのは「選手がショットのルーティンに入ってからの動画撮影の開始・終了(音が鳴る動作)はご遠慮ください」の一文だった。つまり、ルーティンに入る前に撮影を始めて、打ち終わるまで続ければ問題なし。そのため多くのファンが本場のプレーを思う存分撮影していた、というわけだ。

画像: ZOZOチャンピオンシップでは、選手がルーティンに入ったあとに音が鳴る動作を行わない、というルールのもとギャラリーたちのスマホ等での動画撮影が許可されていた(写真は2022年のZOZOチャンピオンシップ 撮影/岡沢裕行)

ZOZOチャンピオンシップでは、選手がルーティンに入ったあとに音が鳴る動作を行わない、というルールのもとギャラリーたちのスマホ等での動画撮影が許可されていた(写真は2022年のZOZOチャンピオンシップ 撮影/岡沢裕行)

ルーティンに入るかどうかの際どいタイミングで撮影開始の“ピコピコ”音が鳴るケースも見られたが、2日目と最終日の2日間コースを歩いた限りでは、これを選手やキャディがとがめるシーンはなかった(写真に関してはルーティンやスウィング中にシャッター音がしてしまうため、一部の撮影可能エリア以外は禁止されていた)。

スマホで撮られることに慣れているPGAツアーの選手たちはともかく、慣れていない日本ツアーの面々が戸惑うことはなかったのか気になるところ。このことをJGTO(日本ゴルフツアー機構)のスタッフが選手にヒアリングしたところ「すごくいいことだと思う」と反対どころか歓迎の声が聞かれたという。

これを他のトーナメントでも解禁すれば「飛ばし屋のスウィングを参考にして飛距離アップしたい」「アプローチが上手い選手はどのようにスウィングしているのか」といった目的でお目当てのトッププロの動画が撮るために会場に足を運んでみよう、となる人が増えることが期待される。

仮に1000人がこうして撮影した動画をSNSにアップして、100人ずつに見られると単純計算で10万人の目に触れることになる。選手やツアーだけでなくファンがSNSで広めてくれることによって、より多くの注目を集めるようにすることが時代に即した形での人気回復策だといえる。

現状、日本のトーナメントではプレー中の動画や写真の撮影は基本的に禁止されている。だがこれは規則や規定で定められているわけではなく、男女両ツアーともに「ギャラリーへのお願い」だ。

そのため「選手会や各トーナメントの主催者の理解が得られれば、撮影をOKにするのは難しいことではありません」(JGTO広報)とのこと。

ルーティンに入る前から撮影を始めるやり方にすることで、カメラの音がスウィングに影響を与える問題は解消された。ギャラリーが嬉しそうに撮影し、選手も全く気にしない様子を見たトーナメント関係者からは「こういうことはすぐにやることが肝心。残り試合数も少なくなってきましたけど、今シーズン中に撮影を解禁するべき」との声も聞かれた。

「男子ツアーは動画が撮れる」。このキーワードが人気回復への足がかりとなるはずだ。

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