11年189日ぶりの優勝は1988年のツアー制施行後では最長のブランク。2017年からシードを落とし、苦しんできたかつての天才少女が33歳にして復活を遂げた。ともに久々の国内ツアー出場となった渋野日向子は9位、畑岡奈紗は47位だった。
2週連続優勝がかかるルーキーの川﨑春花、長らく優勝から遠ざかる金田、最終日はなんとも対照的な2人の優勝争いとなった。経歴だけでなくプレーも対照的だった。ハーフショットを多用する金田と気持ちよく振り抜く川﨑。7、16番で計測されたドライビングディスタンスは川﨑が249.5ヤードに対し、金田は224.5ヤードと大きく差がつき、フェアウエーキープ率、パーオン率でも川﨑が上回った。そんな内容を反映するようにスタート時点の3打差は一時1打差にまで詰まったが、金田は決して並ばせない。ゴルフが気持ちで勝てるとは思わないが、今回ばかりは11年ぶりの優勝にかける金田の思いが上回ったと思わざるを得ない展開だった。
筆者が初めて金田を取材したのはアマチュアとして最後のツアー出場となった2008年の「大王製紙エリエールレディス」と記憶している。「世界ジュニア」など、数々のアマチュア大会を制した実績と派手なメーク、ウエアで知名度は当時からプロ以上。そんな有名アマが初日5位と好スタートを切ったので話を聞きに行くと、出てきたのは最近、自宅に泥棒が入ったという話だった。プロになってからも、金田の口からは車上荒らしに遭った話、ストーカーまがいの恐怖体験などが飛び出した。
ゴルフの話をしてもなかなか話は広がらず、雑談になるとこちらが想像もしていないようなエピソードが出てくるという繰り返し。そんな調子だからこんなにもゴルフが好きで、長くツアーで戦い続ける選手だとは思いもしなかった。本人も「プロになったころは25歳で引退すると思っていた」と口にしている。もしも、2勝目、3勝目ととんとん拍子に優勝を重ねていたら、25歳は早過ぎるにしても、本当に20代のうちに引退していたかもしれない。その時は優勝にこれほど涙する姿も、それでも饒舌にゴルフの話をする会見での姿を見ることはできなかっただろう。
シーズンもいよいよ大詰め。話題は女王とシード、2つの争いに絞られてくる。かつての金田のように優勝経験がありながらシード落ちする選手が何人か出てくるのは確実な状況だ。奇しくも今週は最終プロテストが行われる。毎年、新たな若手が現れ、ツアーはレベルアップしているだけに、一度調子を崩したベテランが最前線に戻ってくるのは容易ではない。それでも、諦めなければチャンスはやってくる。今回の金田の優勝は今苦しんでいる選手にそんな勇気を与えてくれる、そんな1勝だったに違いない。