「最近は全然調子も良くなくて、ショットもパットもなかなかスコアを作れなかったですし。なのでちょっと予想はしてなかったけど、本当に諦めずに頑張ろうって毎日……。結構きつかったんですけど、上手くいかないことのほうが多かったので本当に良かったです」(金田久美子)
11年ぶりの優勝会見では、悔しい気持ちをモチベーションに変えて戦って来た金田選手の思いが伝わって来ました。ライン出しショットを武器に6月の「アースモンダミンカップ」では強風の吹いた3日目に首位と2打差の2位に順位を上げ、最終的に7位タイで終えました。
毎年、千葉県での試合でキャディを務める木村友栄プロは「風の中でフォローを抑えたライン出しショットが、抜群の方向性と距離感を出せていました」と振り返ります。
フェースの開閉を抑えて打つライン出しショットは、高さとスピン量が抑えられることで飛距離の落ち込みはほとんどなく方向性は向上します。しかし、その後ドライバーを替えたりしながら試合を重ねるうちに調子を崩し、振り切る打ち方に戻していたといいます。試行錯誤を重ねながらドライバーを戻し、打ち方もライン出しに戻していたことが今大会の優勝へとつながったと金田選手を支えてきた渡辺彰マネージャー。では、そのライン出しショットを見てみましょう。
左手をややストロングに握り、ボール位置はフルショットよりは右足寄りにセットしています。フェースをボールに向けたままテークバックし、トップの位置はコンパクトですが背中はターゲットに向くくらい十分に捻転されています(画像A)。
切り返しで左へ踏み込み、左股関節のラインを軸に回転していますが、頭の位置、顔の向きはまったく変わっていません。このことによって左腕を長く使い大きな半径でクラブを下ろすことで鋭角になりすぎない入射角を保っています。
インパクト以降フェースを閉じていかなようにするためには、グリップエンドがおへそを向いたままフォローを取ることがライン出しショットのコツになります。
昨年の試合で練習日に転んで足首を捻挫したケガの巧妙からテーピングしてハーフショットしてみると「飛距離もそれほど落ちないし真っすぐ行くぞって。そのときに気づいたことは100%お腹で振るということでした」と週刊ゴルフダイジェストの特集ページで語っていました。
金田選手の言葉を借りると「お腹でクラブを上げ腹筋主体で体を回す」。これこそがライン出しショットの打ち方のコツであり、腕を走らせないことで距離感と方向性を両立できる理由です。
金田選手の優勝は若手の台頭にストップをかけただけでなく、シード落ちした選手や同世代の選手にも大きな勇気を与えたことでしょう。現地取材する度に遅くまで練習していた姿を思い出します。近い将来、3勝目を飾る姿を見せてくれることでしょう。