発売前にテストを開始し投入した女子プロたちが立て続けに4週連続で優勝を飾ったことで、「ZX MkⅡ」シリーズのドライバーは大きな話題になっています。「住友生命Vitalityレディス 東海クラシック」の練習ラウンドで取材した尾関彩美悠選手は、飛距離アップも感じていましたが持ち球ドローの曲がり幅が狭くなり方向性がよくなり投入を決めると、見事に初優勝を飾りました。そこから山下美夢有、勝みなみ、小祝さくらと新ドライバーを投入した選手が結果を出し続けました。
「松山英樹が使えるヘッドという前作から、今作は松山英樹とともに作り上げたモデルになったと思います。フルチタンにした理由は、同じヘッドでカーボンクラウンもテストしましたが、松山プロがチタンのワンピース構造の力が逃げない感じを気に入って、開発チームもフルチタンのワンピースのパフォーマンスがいいはず、と自信をもっていましたのでフルチタンでいこうとなりました」(スリクソンツアー担当宮野敏一)
開発に携わったツアー担当の宮野敏一氏に話を聞くと、最高峰の自動車レースのF1にエンジンを提供するホンダのエンジニアを思い起こしました。シャフトやグリップも重要な要素ではありますが、最高峰のPGAツアーで戦う選手が求める飛距離と方向性、操作性を極限まで高めた日本メーカーのヘッドに込めた思いを話してくれました。
今回試打したモデルは女子プロの使用率の高い「ZX5MkⅡ」とその低スピンモデル「ZX5MkⅡLS」、450CCと少し小ぶりな「ZX7MkⅡ」の3モデル。インドアスタジオ4プラスフィッティングラボでトラックマンを使ってヘッドスピード45m/s程度で計測しました。
ロフトはすべて10.5度、シャフトは純正のディアマナZXⅡ50のSシャフト。3モデルに共通するのはフルチタン、初速性能をアップさせたリバウンドフレームやフェース側に丸みを持たせている点。それぞの違いは重心位置とフォルムになっています。
まずは女子プロが連続優勝を挙げた「ZX5MkⅡ」から。マット塗装の460CCで安心感を感じられながら精悍さも持ち合わせている印象です。クラウンのフェース側が少し丸みを帯びていて視覚的にも優しく見えます。
実際に打ってみると、前作のカーボンクラウンからフルチタンになったこともあるのでしょうか。軟らかくもシャキッとしていて打っていて気持ちのいい打感です。曲がり幅が少なく直進性が高いという特徴があります。球の上がりやすさと適度に入るスピン量、女子プロが好む理由がデータにも表れています。ヘッドスピードに対する初速の割合を示すミート率(スマッシュファクター)が1.49と初速の速さも確認できます。
続いて「ZX5 MkⅡ LS」を打ってみると、スピン量の少なさと弾道の強さ、初速性能に驚きました。キャロウェイ「ローグST MAX LS」やピン「G430LS」、キングコブラ「LTDxLS」など飛距離を売りにする外国ブランドのそれと比べても真っ向から勝負できる性能が感じられました。
「LSではないスタンダードモデルが最初にできあがって、アメリカでテストを重ねるうちにスピン量が多過ぎることが判明しました。やっぱり日本とアメリカでは求められるものが違うことがわかり、アメリカのニーズに応えたのがLSで松山プロもLSを選びました」(スリクソンツアー担当宮野敏一)
データを見ると二つのモデルの入射角は「ZX5 MkⅡ」の4.9度と「ZX5 MkⅡLS」は5.5度(アッパー)とほぼ同じでしたが「ZX5 MkⅡ」よりもスピン量は500rpm前後少なく、フェアウェイ幅に納まる直進性の高さも確認できました。ツアー担当宮野氏の言う通りの性格の違いを感じることができました。「ZX5 MkⅡ」と「ZX5 MkⅡLS」のどちらを選ぶかは、ヘッドスピードや持ち球のスピン量によって選びやすいはずです。
最後にダンロップセレクトショップのみ限定取り扱いの「ZX7 MkⅡ」は前作よりも「ZX5 MkⅡ」との差別化を明確にしたモデルになっています。450CCとわずかに小ぶりで洋梨型のドローやフェードが打ちやすいフォルムを持っています。
もう一つ「ZX7MkⅡ」の特徴は、ソールのトゥ、ヒールに設置されたウェートを変更することでドローバイアスやフェードバイアスにチューニングできること。自分の持ち球から曲がりの幅を少なくしたり、ドローかフェードのワンウェイであれば、それを生かせるセッティングにできるでしょう。
データを見ると、初速性能は共通していますがスピン量は少なめ。球の強さと適度なつかまりもあります。ニュートラルな性格なのでソールの可変ウェートで自分好みにチューニングすることで自分だけの1本にする楽しみもありそうです。
PGAツアーのドライバー使用率1位はタイトリスト、キャロウェイ、ピンと続いています。この性能を見るとスリクソンの「ZX MkⅡ」シリーズのドライバーが上位に入る日が近いかもしれませんね。