11月10日から4日間の日程で開催される「三井住友VISA太平洋マスターズ」。プロゴルファーで編集部員の中村修が現地からのレポートをお届け。

アマチュアとしてレギュラーツアー2勝を挙げ、歴史を作った蝉川泰果選手を見たくて「三井住友VISAマスターズ」の練習日にコースに出かけて来ました。

画像: 18番ホールグリーンわきの池からウォーターショットを練習した蝉川泰果(左)(写真は2022年の三井住友VISA太平洋マスターズ 写真/姉崎正)

18番ホールグリーンわきの池からウォーターショットを練習した蝉川泰果(左)(写真は2022年の三井住友VISA太平洋マスターズ 写真/姉崎正)

アマチュア世界ランク1位になっていた蝉川選手ですが、先週の「マイナビABCチャンピオンシップ」でプロに転向し、初戦を28位タイで終えています。アマチュア世界ランク1位の資格で来年の全米、全英オープンに出場できる可能性を放棄し、プロ転向するという蝉川選手の覚悟を感じていました。

今日の練習ラウンドは、23歳の杉原大河、21歳の蝉川泰果、20歳の日本アマチャンピオンの岡田晃平選手の3名。初めて生で蝉川選手のプレーを見ましたが、石川遼、松山英樹を初めて見たときと同じ衝撃を受けました。なんの躊躇もなく振り切るドライバーはキャリーで300ヤードを越えフェアウェイをとらえます。真っすぐで少し打ち上げの400ヤード5番パー4では、エッジまで70ヤードまで飛ばしていました。それでも「試合になるとも少し飛ぶと思います」と蝉川選手。

画像: 火曜日の練習ラウンドを共にしたのは杉原大河(左から2番目)、岡田晃平(左から3番目)と蝉川泰果(左から4番目)とそのキャディ(写真は2022年の三井住友VISA太平洋マスターズ 写真/姉崎正)

火曜日の練習ラウンドを共にしたのは杉原大河(左から2番目)、岡田晃平(左から3番目)と蝉川泰果(左から4番目)とそのキャディ(写真は2022年の三井住友VISA太平洋マスターズ 写真/姉崎正)

太平洋C御殿場Cの速くて富士山の影響を受けるグリーンを入念にチェックする姿やグリーン周りのアプローチ練習は、ZOZOチャンピオンシップで見たコリン・モリカワと同じような勝つための練習ラウンドに感じました。

特にグリーン周りのアプローチではロフト60度、バウンス角6度のローバウンスのウェッジを開いて使い、スピンの効いたボールで厳しいピン位置を想定して何度も練習していました。ストロンググリップで握りフェースを開き、浅い入射角でフェースに乗せるように打つスピンを効かせたアプローチや御殿場コースの速いグリーンでもスピンを効かせるバンカーショットなど、技術の高さも見せてくれました。

画像: グリーン周りを入念にチェックしながらショートゲームをもう一段レベルアップしたいという蝉川泰果(右)と杉原大河(左)(写真は2022年の三井住友VISA太平洋マスターズ 写真/姉崎正)

グリーン周りを入念にチェックしながらショートゲームをもう一段レベルアップしたいという蝉川泰果(右)と杉原大河(左)(写真は2022年の三井住友VISA太平洋マスターズ 写真/姉崎正)

高校生までコーチを務めた青木翔コーチによると「中学生までは飛ばなかったのでアプローチでスコアメイクできるように重点的に練習していました」という確かなアプローチの技術を感じさせられました。体力が上がって飛ぶようになった現在でも「自分なりの感覚を生かして、もう一度アプローチを強化しようとしています」とぬかりはありません。

ショット、アプローチ、パットのどれからも目が離せなくなるような蝉川選手のプレーでしたが、さらに驚いたのは練習ラウンドをしながらボール1箱にサインをし、見ていたギャラリーに配り始めたこと。ギャラリーが湧くようなプレーをしたいという蝉川選手のプレースタイルは、プロ意識を持つからこそなんだと改めて感じられました。

画像: 18番ホールのグリーン手前の池の淵から水切りショットでグリーンを狙う蝉川、杉原、岡田(右から)(写真は2022年の三井住友VISA太平洋マスターズ 写真/姉崎正)

18番ホールのグリーン手前の池の淵から水切りショットでグリーンを狙う蝉川、杉原、岡田(右から)(写真は2022年の三井住友VISA太平洋マスターズ 写真/姉崎正)

同じ青木翔門下生つながりの亀代順哉選手が蝉川選手と夕飯を共にした際に「今週は100点のショットを4日間打ち続けて優勝します」と自信に満ち溢れた蝉川選手の言葉に、自分もそう思ってプレーしなければだめだと気付かされたと教えてくれました。

恐れることなくドライバーを振り切り、ピンを狙うアグレッシブなアイアンショットを見せられているうちに、同じく青木翔門下生だった渋野日向子選手とだんだん重なってきます。ギャラリーを湧かせるプレーこそ、男子ゴルフ人気復活の特効薬なのかもしれません。

50回大会を記念して、火曜日の練習日と初日から最終日までギャラリーの入場無料となっています。新宿から小田急ロマンスカーで約90分御殿場駅に着くとギャラリーバスでコースまで送迎がありますので、ぜひ足を運び蝉川泰果のプレーを見てください。きっと期待に応えるプレーを見せてくれるはずです。

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