石川遼が三井住友太平洋マスターズでおよそ3年ぶりに優勝を飾った。小雨そぼ降る18番、星野陸也とのプレーオフ2ホール目で4メートルのバーディパットを沈めて大会10年ぶり3度目の勝利を飾った石川は万感胸に迫る表情で復活Vの余韻を噛みしめた。
画像: たくさんのギャラリーが詰めかけたなかでの勝利。多くのゴルフファンが石川遼の優勝を待ち望んでいたのかJGTOのスコア速報にアクセスが集中し、つながりにくくなったほどだ(写真は2022年三井住友太平洋マスターズ 撮影/姉崎正)

たくさんのギャラリーが詰めかけたなかでの勝利。多くのゴルフファンが石川遼の優勝を待ち望んでいたのかJGTOのスコア速報にアクセスが集中し、つながりにくくなったほどだ(写真は2022年三井住友太平洋マスターズ 撮影/姉崎正)

すんなり勝ったわけではない。午前中から吹いた激しい風が収まり鈍色の空から小雨が落ち始めた頃、通算8アンダーで星野と並んだ石川はパー5のチャンスホールでバーディを奪えず決着はプレーオフにもつれ込んだ。

サドンデス1ホール目をパーで分けたあとの2ホール目、1ホール目で1.5メートルのバーディチャンスを決めきれなかったことが心の奥に引っかかったまま放ったティショットは右の林に飛んだ。2オンは狙えない。2打目を左のラフに打ち、3打目でピン手前4メートルにつけた。

血気盛んだった頃の石川なら派手なイーグルで決着をつけただろう。しかし今回は「丁寧にプレーすることを意識して」泥臭い選択をした。7千人を超すギャラリーが固唾を飲んで見守る中、雨で少し遅くなった御殿場のグリーンをジャストタッチで読みカップに沈めた。

石川より先に佐藤キャディが興奮した様子で選手に駆け寄った。当の本人は天を見上げ小雨を顔に受け止めた。歓声に包まれながら「自分が勝ったっていう感じで扱っていただいていますが実感がない。正直信じられません」と感慨深げに呟いた。

画像: かつての石川らしい派手な勝ち方ではなく、トラブルからリカバリーして寄せてバーディパットをしっかり決めての勝利。取り組んでいるスウィング改造はまだ完成していない(写真は2022年三井住友太平洋マスターズ 撮影/姉崎正)

かつての石川らしい派手な勝ち方ではなく、トラブルからリカバリーして寄せてバーディパットをしっかり決めての勝利。取り組んでいるスウィング改造はまだ完成していない(写真は2022年三井住友太平洋マスターズ 撮影/姉崎正)

 
高校に進学したばかりの07年マンシングウェアオープンで優勝しゴルフの歴史を塗り替えた石川は10代から20代の前半にかけ出れば優勝争い、優勝争いすれば勝つ勢いで瞬く間に二桁勝利を挙げ賞金王にも輝いた。

しかしゴルフは右肩上がりが続くスポーツではない。米ツアーに挑戦、撤退。挫折を乗り越え30代になった今本当の意味でプロらしさが備わってきた。

3年前から取り組んできた「ショットの再現性を高めるため」のスウィング改造はまだ満足する領域には達していない。「もっと磨ける」と3年ぶりの優勝に甘んじずさらなる高みを目指すつもりだ。

彼が取り組んでいるのはいわゆるシャローイングと呼ばれる低い弧で振るスウィング。石川に傾倒する渋野日向子も取り組んでいるスタイルだ。シャローイングの良し悪しは別として石川の技術の高さはツアー屈指。

たとえば太平洋御殿場GCの17番パー3。230ヤードと距離がある池越えのパー3は今どきのプロならアイアンで狙うことができる。しかし石川は敢えてそこでユーティリティを持ちスウィングスピードをコントロールしながらグリーンを狙うマネジメントをおこなった。

フルショットで最後まで振り抜く方がやさしい。だが石川は長いクラブもただ振り抜くだけでなく自在に緩急をつけ球の高さや勢いをコントロールしながらプレーをしている。そのあたりの技術力は国内では石川がナンバー1だろう。

大会3日目1万人を超すギャラリーを目にして「泣きそうになった」という石川。ツアー18勝目を機に今度は彼がギャラリーを泣かせるプレーで魅了してもらいたい。

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