「三井住友VISA太平洋マスターズ」で約3年ぶりの優勝を飾った石川遼。スウィング改造の成果が実ったスウィングをプロゴルファー・中村修が解説。

3日目を終えて単独首位に立っていたのは、アマチュアで2勝を挙げプロ転向し、プロとしての初優勝を目指した蝉川泰果選手でしたが、後半に崩れます。強風と雨のコンディションで最後に残ったのは、石川遼、星野陸也の二人。プレーオフで18番パー5を二度繰り返し、石川選手がバーディを奪って、この大会3勝目を手にしました。

火曜日の練習ラウンドに現地を訪れると、石川選手のコーチを務める田中剛氏から石川選手の調子が良いと聞いていました。勝因は「ブレずに決めたことを焦らずにやってきた。これにつきますね。まったくブレませんでしたから」と田中コーチ。当初の予定通り3年を費やして再構築してきたスウィング。さっそく見てみましょう。

石川選手の再構築スウィングのポイントは大きく二つ。一つはアップライトだったスウィングプレーンをフラットにし、入射角を浅くシャローにすることで手元の浮きをなくし、フェースの開閉も少なくしてきたこと。トップでは左手首は手のひら側に折れる掌屈をし、シャフトの向きがターゲットよりも左を向くレイドオフ。下半身主導で切り返すと右腕とシャフトが重なる入射角の浅いダウンスウィングでインパクトを迎えていることが見てわかります。

画像: 画像A トップでは左手首は手のひら側に折れる掌屈をし、シャフトの向きはターゲットより左を向くレイドオフ。そこから下半身で切り返すことで右腕とシャフトが重なる入射角の浅いインパクトを迎える(写真は2022年の日本オープン 写真/姉崎正)

画像A トップでは左手首は手のひら側に折れる掌屈をし、シャフトの向きはターゲットより左を向くレイドオフ。そこから下半身で切り返すことで右腕とシャフトが重なる入射角の浅いインパクトを迎える(写真は2022年の日本オープン 写真/姉崎正)

もう一つは、左右の体重移動を大きく使って飛ばしていたものを、その動きを少なくし回転力を増やすというもの。

素振りをじっくり見ていた人はお気づきだと思いますが、脱力してテークバックすると切り返しから鋭く振っています。スウィングでは引き伸ばされた筋肉が縮む際に力を出す伸張反射を使いますが、石川選手の素振りではその伸張反射をほとんど使っていないように見えます。田中コーチにそのことを聞くと「慣れれば伸張反射をあまり使わないほうが距離も方向性も安定します」と教えてくれました。

その素振りのように左右の体重移動は少なくなり、自分がイメージするトップの位置にも上がるようになっています。

画像: 画像B オーソドックスなスクエアグリップで握りバランスの取れたアドレスから(左)、右への移動の少ないトップ(右)(写真は2022年の太平洋VISAマスターズ 写真/姉崎正)

画像B オーソドックスなスクエアグリップで握りバランスの取れたアドレスから(左)、右への移動の少ないトップ(右)(写真は2022年の太平洋VISAマスターズ 写真/姉崎正)

切り返しで左への体重移動は最小限で、インパクトではベルトのバックルがターゲットを向くくらいしっかりと骨盤が回転していることが確認できます。左右の動きを少なくしたことでインパクトを安定させ、入射角を浅くしたことでスピン量も安定させる狙いと、回転力を増大させることでフェースの開閉を少なくさせる意図が見て取れます。

画像: 画像C 切り返しから左への移動は少なく、インパクトではベルトのバックルがターゲットを向くくらいの回転力をボールに伝える(写真は2022年の太平洋VISAマスターズ 写真/姉崎正)

画像C 切り返しから左への移動は少なく、インパクトではベルトのバックルがターゲットを向くくらいの回転力をボールに伝える(写真は2022年の太平洋VISAマスターズ 写真/姉崎正)

田中コーチと二人三脚で「ブレずに決めたことを焦らずにやってきた」石川選手のこれからに期待を持たせてくれる勝利となりました。今季残り2試合での活躍にも注目していきましょう。

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