「最年少の追っかけができたんだよ」。池田がうれしそうにそういったのは太平洋御殿場でおこなわれた三井住友太平洋マスターズのこと。なんでもセナくん一家(家族4代!)は、北は北海道から南は九州まで応援に駆けつける大のゴルフ好き。1歳年上の姉・ゆあちゃんは中島啓太のファンだがセナくんは池田ひとすじだ。
子供好きの池田がギャラリーのなかのセナ君を見逃すわけがない。しばらくして交流が始まったが池田が話しかけても人見知りのセナくん、最初はひと言も発しなかった。
「それがつい最近しゃべったんだよ。“勇太くん、がんばって!”って。ラウンド後? まずハグだね」と目に入れても痛くない様子。
先日小学校受験に合格したセナ君に合格祝いを届けようと池田が両親に「何か欲しいものを聞いて」と問い合わせた。すると「ランドセルでも買ってあげようかなと思ったら“勇太くんが優勝したときのボール”っていうんだよ」
モノではなくウィニングボール! まさにファンの鏡。こうなったら1日でも早く22勝目を挙げてセナくんにボールをプレゼントするしかない。
左半身の故障で不調だった今シーズン、池田に優勝のチャンスが訪れたのは憧れのジャンボ尾崎が7勝を挙げ、自身も過去2勝と思い入れが強いANAオープン。初日からトップを走り最終日を3打リードで迎えたが1打足りずプレーオフ進出を逃した。そのときは左首の痛みと戦っており72ホール体が保たなかった。
ここ数年悩まされてきた体調不良の原因が顎関節症によるものだと発覚したのは今年の中盤。試合中奥歯を強く噛みしめるためで、口腔外科で診察を受けると左右の歯の高さが5ミリほど違うことがわかった。たった5ミリが痛みや腫れなど様々な症状を引き起こしていた。それを矯正するため特殊なマウスピースを特注でつくり食事を摂るとき以外22時間装着する生活がこの秋始まったの。
滑舌が悪くなるほど頑強な器具でそれを嵌めたまま寝るのがストレス。たった数ミリ矯正しているだけなのに体の重心が変わり、立っているとそっくり返っているように感じる。「それを嵌めて初めてドライバーを打ったらダフった(苦笑)」。ティアップしたボールを打つのに池田クラスがダフることはあり得ない。「見た目は変わらないかもしれないけれど、自分の中ではスウィングのイメージが180度変わった」。しかし首や左半身の痛みは嘘のようになくなった。
矯正期間は3カ月の予定。それで体の左右のバランスが整えば再び池田らしい切れ味鋭いショットが戻るに違いない。いやその前にセナくんの希望を叶えるため今年中に19年のミズノオープン以来3年ぶりの優勝を狙いたい。