コーチ専用のゴルフスウィング解析アプリ「スポーツボックスAI」は、スウィング動画をAIによる3D解析技術でデータ化することができる。今回は、ダンロップフェニックスで初日首位に立った「シャロ―イングの申し子」ミト・ペレイラのドライバーショットとアイアンショットをゴルフコーチ・北野達郎がAIを使って比較分析した!
画像: 2022年ダンロップフェニックスで活躍。26歳のチリ人選手、ミト・ペレイラ(photo/Getty Images)

2022年ダンロップフェニックスで活躍。26歳のチリ人選手、ミト・ペレイラ(photo/Getty Images)

みなさん、こんにちは。「スポーツボックス AI 3D」スタッフコーチの北野 達郎です。今回は先月のZOZOチャンピオンシップに続いて、ダンロップフェニックスにも参戦しているミト・ペレイラ選手のドライバーとアイアンのスウィングの比較をスポーツボックスAIの解析をもとに比較してみましょう。

彼のスウィングは日本でも「シャローイング」の代表的な選手として頻繁に取り上げられていますが、スポーツボックスのデータでの彼の特徴は、①ドライバーとアイアンでの左右の移動量の差、②胸がスウィング中にずっと低い位置を保つ「カバー・ザ・ボール」の2点です。

まずトップの写真を比較しますと、アイアンは胸(CHEST)・骨盤(PELVIS)共に左右の移動(SWAY)は0〜1インチとほぼその場で回転しているのに対して、ドライバーは胸が−2.4インチ(約6.1cmアドレスより右)と右足側へ移動しています。この胸がアドレスのポジションより右にあるポジションは、ダウンスウィング〜インパクトにかけても終始キープされて、データはずっとマイナス(アドレスより右)のポジションに残ります。

このことでドライバーでの入射角(アタックアングル)はアッパーブローに打ちやすくなります。逆にアイアンでは胸は僅かに左へ移動している事がわかります。このアイアンのほうが左へ戻る傾向は骨盤でも同様で、インパクトでの骨盤のポジションはドライバーで2インチ(約5.1cm左)アドレス時より左側へ移動していますが、アイアンショットでは6.2インチ(約15.7cm左)移動しており、ドライバーとアイアンで左への移動量には約10.5cmの差があります。

これはアイアンショットでは、ボールの先でクラブヘッドの最下点を迎えてダウンブローに打ちたいので、骨盤が左側へスライドすることによってボールの先でターフを取るダウンブローのインパクトを作りやすくなります。逆にドライバーショットではあまり左へスライドすることなく、その場でターンすることでアッパーブローのインパクトを作りやすくなります。このように、ドライバーとアイアンで胸と骨盤の左へのスライド量の差が大きく異なるプロは増えてきており、他にもトミー・フリートウッドやキャメロン・チャンプなどもこのタイプです。これはトラックマンやGCクワッドなどの弾道測定器の精度が向上したことで、ドライバーやアイアンでのそれぞれ最適なボールコンタクトや、それに関連する体の動きが解明されてきたことが影響していると考えられます。

画像: ドライバーショットをアイアンショットのトップを比較。アイアンショットでは、ほぼその場回転だが、ドライバーショットでは、胸が約6.1㎝右に移動する

ドライバーショットをアイアンショットのトップを比較。アイアンショットでは、ほぼその場回転だが、ドライバーショットでは、胸が約6.1㎝右に移動する

また、彼のスウィングの特徴を示すデータに「胸の上下動(LIFT)」があります。トップでドライバーは胸が−1.3インチ(約3.3cmアドレスより下)、アイアンで胸が−3.1インチ(約7.9cm下)とそれぞれアドレスより低いポジションにあり、インパクトではドライバーは胸が−0.3インチ(約0.7cm下)、アイアンでは胸は−3.8インチ(約9.7cm下)とスウィング中に胸がずっとアドレス時より低い位置に保たれています。これは「カバー・ザ・ボール」と呼ばれる胸がボールに覆いかぶさるような動きで、この動作が入ることで上体が浮いてしまうことなく前傾がキープされ、手元の低いインパクトを作りやすくなります。ドライバーはティーアップしたボールをアッパーブローにとらえたいため、トップより少し胸は上昇してインパクトを迎えていますが、それでもアドレス時よりは低い位置を保っています。これが「アーリーエクステンション」と呼ばれる上体の起き上がりとの大きな違いです。

そして地面にあるボールをダウンブローに打ちたいアイアンでは、トップよりさらに低い位置に下がってインパクトを迎えているので、手元の高さも非常に低い位置でインパクトが出来ています。最近主流のシャローイング理論は、一旦背中側へ寝かせたクラブが立ってインパクトにむかう事で手元が低く再現性の高いインパクトを実現するというものですが、この胸が低く保たれた「カバー・ザ・ボール」の動作も手元の低いインパクトを実現する上で非常に重要です。体が低い位置に保たれると、手元が浮いたインパクトでは大きくダフりますので、手元を低く保ったインパクトが身についていきます。シャローイングのスウィングを練習をされている方は、この胸を低く保つ「カバー・ザ・ボール」の練習も同時に取り組んでいくと効果的です。

画像: インパクトではドライバー、アイアンともにアドレス時より、胸が低い位置にある。「カバー・ザ・ボール」という動きだ

インパクトではドライバー、アイアンともにアドレス時より、胸が低い位置にある。「カバー・ザ・ボール」という動きだ

今回はミト・ペレイラ選手のスウィングを解説させて頂きました。彼のスウィングデータは正に現代のスウィング理論が随所に見られて、非常に新鮮でした。今年は全米プロで惜しくも敗れましたが、近い将来きっと再びメジャーで優勝争いに加わってくるでしょう!

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