「エリエールレディスオープン」の最終日、鈴木愛とのデッドヒートを制して11年ぶりの通算6勝目を飾った藤田さいき。ツアーの第一線で長くプレーする藤田のスウィングをプロゴルファー・中村修が解説。

「今までさんざん崩れてきて、今日はとにかくパープレーを目指してやっていたので、こういう結果につながったのだと思います」と、優勝会見で今季3度の2位の悔しい経験を振り返りました。金田久美子の優勝、上田桃子ら同世代の活躍に勇気をもらったということもあるのでしょう。

オフの合宿を共にした青木瀬令奈選手はプレースタイルは違えども、目指すべき存在でいつも勇気を与えてくれると話してくれました。

「長くツアーに参戦するなかで、私はオフに飛距離アップとかスウィング改造に取り組んできたのですが、さいきさんはスウィング改造よりも一つ一つの質や精度を上げることに取り組んでいました。なるほど、それは『変えない勇気』だと。シーズンに向けてどんなことに取り組むべきか、背中を押してもらいました」(青木瀬令奈)

これまで積み重ねてきたスウィングを磨いて一つ一つのショットの質を上げる。まさにドライバー、アイアン、アプローチ、パットと優勝争いの中で質の高い一打を打ち続け、まるで殴り合いのような鈴木愛選手とのデッドヒートを制しました。ではそのスウィングを見てみましょう。

オーソドックスなスクェアグリップで握ったバランスの取れたアドレスから、クラブよりも体から始動していく点に特徴があります。右サイドに荷重する動きから始動し、ヘッドは後からついてくるように動き始めます。まるでムチを大きく振るようなイメージが感じ取れます。

画像: 画像A 体の動きが先行しクラブヘッドが後からついてくるような始動(写真は2022年のTOTOジャパンクラシック 写真/JGMA)

画像A 体の動きが先行しクラブヘッドが後からついてくるような始動(写真は2022年のTOTOジャパンクラシック 写真/JGMA)

ヘッドが後からついてくるようなテークバックから、トップでも右サイドにしっかり荷重されています。スウィングは人によって千差万別ですが、ダウンスウィングに入る体の動きには共通する動き出しの順番があるといいます。

「キネマティックシークエンス」と呼ばれる動き出しの順番が整うことで飛距離や再現性を高めることができます。

クラブから一番遠い、足の荷重を右に移すところから始動した動きが、下半身から上半身へと伝わります。トップを迎える前に切り返す動きもクラブから一番遠い左足から巻き戻しが始まります。その動きに引っ張られるようにクラブが動き出しダウンスウィングに入っていきます。

大きくムチを振るような藤田選手のスウィングはイメージしやすいでしょう。

画像: 画像B トップから切り返す際の体の動き出す順番が狂わないことが再現性を高めている(写真は2022年のTOTOジャパンクラシック 写真/JGMA)

画像B トップから切り返す際の体の動き出す順番が狂わないことが再現性を高めている(写真は2022年のTOTOジャパンクラシック 写真/JGMA)

始動で右のかかと内側から右股関節を通る位置に軸を決めたら、左へ突っ込まずに頭の位置(軸)をキープしながら左サイドから巻き戻していきます。

先行して動き出した部位の動きは減速しながら足、腰、体幹部、上半身へとクラブに近いほうへ伝達されていきます。最終的にはスピードの乗った手元が減速しヘッドへと力が伝わっていきます。

画像: 画像C ムチを大きく振るように体幹を使ったスムーズな加速で飛距離を稼ぐ(写真は2022年のTOTOジャパンクラシック 写真/JGMA)

画像C ムチを大きく振るように体幹を使ったスムーズな加速で飛距離を稼ぐ(写真は2022年のTOTOジャパンクラシック 写真/JGMA)

体の動き出す順番が狂わない藤田選手のスウィングは効率的で体に無理のないスウィングといえます。今大会のドライビングディスタンスは原英莉花選手(273.875ヤード)、勝みなみ選手(266.571ヤード)に続いて265.875ヤードで3位。飛距離で若手に負けていないことも長く戦える理由になっています。

11月22日に37歳の誕生日を迎えた藤田さいき。33歳で11年ぶりの優勝を遂げた金田久美子、36歳の上田桃子選手らと最終戦の「ツアーチャンピオンシップ リコーカップ」を盛り上げてくれることでしょう。

画像1: 【芸能界No. 1?】湘南乃風RED RICEさんのスイングをユージがレポート!#shorts youtube.com

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