黄金世代、新世紀世代、19歳ルーキーなど、若手の台頭が目覚ましい女子ツアー。そんななか、先日行われた最終プロテストに、ゴルフダイジェスト誌の「ビューティ」として活躍していた24歳の竹内美来が挑戦。しかし、6度目の挑戦も不合格。プロテスト突破の難しさとは?

JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)が主催するプロテストは、女子ツアーに出場するための最初の試練と言われる。2019年以前は、プロ資格(JLPGA正会員)がなくてもツアー出場資格を決めるQT(クオリファイング・トーナメント)に出場することができた(TP単年度登録選手になる)。だが、19年のツアー制度改定により、QTに出るにはプロ資格が必要となった。女子ツアーを目指す選手たちにとって、最終プロテストは越えなくてはならない壁となったのだ。

11月初旬、茨城・大洗GCを舞台に22年度の最終プロテストが行われた。今年の総受験者数は649人。そして合格者は20人だった。つまり合格率にすると3.1%。難関と言われる国家資格よりも難しいテストなのだ。

女子プロテストは年1回の開催。8月に1次予選、10月に2次予選を経て11月に最終プロテストが行われる。そして合格ラインは上位20位タイまでだ。まさに「超難関」と言っても過言ではない。

画像: 週刊ゴルフダイジェストのガールズユニット“ゴルル”として活躍していた竹内美来(撮影左/岡沢裕行、右/三浦孝明)

週刊ゴルフダイジェストのガールズユニット“ゴルル”として活躍していた竹内美来(撮影左/岡沢裕行、右/三浦孝明)

この最終プロテストに進出したゴルル(週刊GDガールズユニット)のメンバーがいた。それが、2020年に選ばれた竹内美来(24)だ。今活躍する女子プロたちのほとんどが小学生からゴルフを始めているが、竹内は高校生からゴルフを始めたという。プロゴルファーを目指す選手としては、かなり遅いデビューといえる。

「実は小学生のときにゴルフを始めたのですが、ボールが当たらなくてすぐやめてしまいました。そして高校進学のとき、ゴルフスクールを経営していた父のすすめもあってゴルフ部のある高校(埼玉平成)を選び、ゴルフ部に入部しました。完全な素人でしたから周りの選手と比べて本当に下手でしたね。高校1年で出場した最初の試合は、確か97位でした。あまり覚えていないのですが、グリーンのカラーでマークしてしまい、罰打をもらった記憶があります。ルールすらも知らなかったんです。高校3年間、ゴルフ部で頑張りましたが、それほどまじめに取り組んではいなかったと思います。高校卒業後、ゴルフ場に研修生として入ってからゴルフが楽しくなり始めたんです。父に教えてもらったり、所属プロに教えてもらったりして、少しずつ上手くなっていく実感があって、ゴルフの楽しさがわかり始めてきました。そして研修生2年目のとき、初めてプロテストに挑戦しました」

初めての挑戦は、小祝さくらや勝みなみら黄金世代との戦い

竹内が最初に受けたプロテストは2017年度(富山・小杉CCで開催)に行われたものだ。勝みなみ、小祝さくら、新垣比菜、淺井咲希など、女子ツアーをけん引する黄金世代(98年生まれ)が、数多く合格した年だ。

「初めての最終プロテストは最終日まで進めず、最下位でした。当時は80台前半で回るくらいのレベルだったのですが、初日に75を出せたんです。3日目にも78を出しました。いつもよりいいスコアが出せたことが本当に嬉しかったです。70台が出る喜びを感じた瞬間でもありました。初めてのプロテストだったので、ただ出ただけという感じもありましたが、最終まで行けたのもよかったです。これがきっかけで本気で『プロを目指そう』と思うようになりましたから」

ゴルフスクールを経営する父親はかつてプロテストに挑戦していた。惜しくもその夢は叶わず、ティーチングの道へと進んだわけだが、父親が果たせなかった夢をつかみたい、という思いも竹内にはあったはずだ。

竹内は今年のプロテストで6度目の挑戦となった。最初に受けた17年は最終まで進出するも20オーバーで最下位。そして2019年度も最終まで進んでいる。そのときは11オーバーだった。そして今年のプロテストで3回目の最終まで駒を進めたのだ。

ちなみに直近5回のプロテストを振り返ると、合格ラインは、8アンダー(2018)、1オーバー(19)、4アンダー(20)、4オーバー(21)、3オーバー(22)だった。最終プロテストは毎年会場が異なるため、一概には言えないが、4日間競技で考えると各日1オーバーでは合格は厳しい。それほど選手たちのレベルが上がっている証拠でもある。

ゴルフ場の研修生をしていた竹内だが、コロナ禍により20年夏に解雇されたという。本人も練習施設が使えなくなったのが辛かったと語っていたが、週3でキャディのバイトをしたり、ワンデーの試合に出るなど、自分なりに技術、マネジメント、メンタルなどを磨いていったという。そして今年度の最終プロテストに挑んだ竹内は、目標スコアを設定。

「最低でも4日間パープレーで回る。そしてどこかでアンダーを出せば、通過できると考えました」

画像: 「いくら経験を積んでいても緊張はなくならなくて……」(竹内)とプロテスト独特のプレッシャーに打ち勝てず(撮影/小林司)

「いくら経験を積んでいても緊張はなくならなくて……」(竹内)とプロテスト独特のプレッシャーに打ち勝てず(撮影/小林司)

最終プロテストは今回で3回目となった竹内。レギュラーツアーとは異なり、無観客で行われるプロテストは、張り詰めた空気の独特な雰囲気がある。

「プロテストは年1回しかありませんから何度挑戦しても緊張します。試合中はご飯も食べられなくなりますし、夜もよく眠れません。正直、プレッシャーに押しつぶされそうになるくらい辛いです。いくら経験を積んでいても緊張はなくならないと思います。前年度で最終まで進出していれば、1次予選は免除になりますが、今年は1次予選からの挑戦でしたので長い道のりでした」

今年の会場となった大洗GCは名匠、井上誠一が設計したシーサイドリンクス。男子の日本オープン、ダイヤモンドカップなどを開催した日本を代表する名コースで、大松が空中ハザードを作り出す、難コースとしても有名だ。
「コースは確かに難しいです。でも左右のOBが少なく、グリーンも大きいのでチャンスはある、と思っていました。私には向いているコースという印象でした」 

「いかに悪い流れを止められるか、そこがカギだった」(竹内)

最終プロテストは72ホールのストロークプレーで行われる。今年度は104人が出場し、54ホール終了時点で80位タイまでが最終日に進出できる。初日は悪天候によるサスペンデッドもあったが、2日目以降、天候は安定していった。竹内は初日75、2日目75、3日目72で最終ラウンドに残った。

「練習場でのショット練習はすごくよかったのですが、練習と本番は違いました。なぜかコースに出ると上手く打てなかったんです。ティーショットが大きく曲がってしまい、林にも何回か入れました。最初で曲げてしまうとセカンドも狙えなくて……。アイアンはよかったのにそれが生かせませんでした。だからグリーンを外す機会が多くなってしまい、アプローチでも上手く寄せられず、悪い流れを止められなかったです」

竹内の身長は168センチ。恵まれた体から繰り出す、ドライバーの飛距離が彼女の武器でもあったが、その武器が生かし切れなかったのだ。

「ドライバーが真っすぐ飛ばなかったんです。ここが上手くプレーできなかった要因のひとつでもあります。パッティングに関してもチャンスにつけているのにバーディが決められない場面がありました。初日と2日目で3パットもありましたし、ティーショットとショートゲームで流れを悪くしてしまいました。アプローチでもチャンスを作れなかったし……」

プロテストは4人1組で行われるが、すべてのラウンドをハウスキャディ1名が担当する。当然、自分でバンカーをならしたり、手が空いた選手がピンを持ったりすることもある。レギュラーツアーのように専属キャディは付けられないから、自分のプレーのみに専念できるか、というとそうでもないのだ。ただ、これはすべての選手にいえること。それを言い訳にはできない。

「いかに悪い流れを止められるか、そして流れをよくできるか、そこがカギだったと思います。バーディも何個かあったけど、それ以上にボギーが止められなかったです。自分が思い描く、いい流れに持っていけなかった。本当に悔しいです」

6度目の挑戦となった竹内の最終プロテストは、残念ながら合格には至らなかった。

竹内の最終ラウンドのスコアは75。トータル9オーバー、46位タイという結果となった。今年の最終プロテストの合格ラインは3オーバーだ。各日で1.5打縮められれば、合格していたことになる。さらにいえば、竹内は4日間でバーディを9個取っている。逆にボギーは16個、ダボは1個。いかにボギーを出さず、パーで凌げるかでスコアは大きく変わっていただろう。

「プロになりたい気持ちは今も変わりません。だから来年もプロテストに挑戦します! ゴルフ規則が変わり、アマチュアでもスポンサーが付けられるようになったのですが、支えてくれるスポンサー、そして家族に恩返しがしたいです。プレッシャーは大きいですけど、自分の力で乗り越えていきたいです。最終的にはプロになってツアーで戦ってみたい。その夢に向かって走り続けます」

JLPGAプロテストは年1回しか行われない。そのチャンスにかける選手のプレッシャーは、想像を絶するものだろう。何度も挑戦すれば、心が折れる選手だっている。だが、夢を諦めない選手たちは、何度でも立ち向かっていく。

毎年20人(+α)しか合格者になれない「プロ」という資格は、それだけで尊敬に値するものだろう。華やかな女子ツアーという晴れ舞台に立つ日まで、選手たちの歩みが止まることはない。

※週刊ゴルフダイジェスト2022年12月6日号「ゴルルが挑戦した最終プロテスト」より

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