平均ストローク69.9714という日本人選手で初の69点台に入る快挙を成し遂げ、ポイントランク1位、獲得賞金歴代1位、パーオン率1位、パーセーブ率1位、ボールストライキング1位、60台のラウンド数1位、幾つもの大会でコースレコードを更新するなどなど一年間を通して活躍しました。記録更新をかけた最終戦でも落ち着いたプレーと正確なショット、コーライグリーンに合わせたマネジメントとパッティングで、勝みなみ選手をプレーオフで退け、改めてその強さを見せつけました。
会場となった宮崎CCはアップダウンはあまりない地形ですが、適度なドッグレッグとフェアウェイの傾斜があり、フェアウェイにボール置くことが難しいホールがいくつもあります。山下選手の4日間のスコアカードを見るとアウトコースではトータル3アンダーですが、インコースでは12アンダーを稼いでいます。スコアの伸ばしにくいアウトコースでは無理せずに、インコースで固め打ちすることでスコアを伸ばすマネジメントが成功しています。そういったコース攻略も含めたレベルアップを成し遂げた1年だったと思います。
優勝会見で日本人史上初の平均ストローク69点台達成になったポイントを聞くと「やっぱりショットですね。飛距離も後半戦から伸びて、ドライバーも新しく替わったので、去年に比べて伸びました。そこからのセカンドの精度がよくなったのが一番だと思います」とショット力の高さがその原動力になったと語りました。では、ボールストライキング(トータルドライビングにパーオン率を合算した値)1位のスウィングを見ていきましょう。
左手はややストロングに握り、スタンスはやや広めのアドレス(画像A左)から縦方向のコックを入れながらテークバックしていきます。左腕が地面と平行になる位置で背中はターゲットを向き、そこからさらに捻転しトップを迎えます。ブレないしっかりとした右サイドは、トレーニングの賜物でしょう。始動で少し右へ移動し右股関節に荷重しますが、大きく右へ移動するタイプでもなく、ごくオーソドックスです。
捻転の深いトップからの切り返しは「トップで間を置くのは置いているんですけど、連動して動かないといけないので、しっかり下半身から動かして、下から下からというふうにやってました」と優勝会見で話した通り、切り返しで骨盤の前傾を保ったまま左へと踏み込んでから回転し、上半身やクラブは後からついてきます(画像B左)。山下選手は、手元が体から遠く、クラブヘッドが描く半径が大きくなることでクラブを加速させる助走距離を保ち、入射角が鋭角にならずに安定するというストロングポイントを持っています。
左へ踏み込んで回転力を作ったあとに、左ひざを伸ばしながら左サイドにブレーキをかけることで動きの連動性が高まり、効率よくヘッドを加速させることにつながっています(画像B右)。山下選手のトラックマンデータを見ると、スピン量が安定しミート率(ヘッドスピードに対する初速の割合)が高いとダンロップのツアー担当者は言います。つまり、安定した入射角で芯で当てられる確率が高いスウィングを身につけていることを表しています。
ゴルフを始めた幼少期から父、勝臣さんの指導を受け、調整を重ねながらシーズンを戦ってきました。時折、フィニッシュでバランスを崩すようなラウンドでの姿も見受けられましたが、すぐに修正し、翌日にはビッグスコアを叩き出す修正力、対応力の高さを何度も見せてきました。勝臣さんにチェックポイントをたずねても「企業秘密」と答えてはもらえません。古江彩佳選手も同じく父親がスウィングをチェックしています。スウィングを勉強し、小さいころからトライ&エラーをくり返しながらスウィングチェックをしてきた親御さんの目には驚くべきものがあります。
昨シーズンは賞金女王に稲見萌寧、ポイント女王は古江彩佳選手でしたが、今シーズンは山下選手の記録ずくめのシーズンとなりました。来年はどんな選手が活躍しツアーを盛り上げてくれるのでしょうか。早くも開幕が待ち遠しくなりそうです。