国内男子ツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」で連覇を達成した谷原秀人。今季最年長優勝を挙げた44歳のスウィングをみんなのゴルフダイジェスト編集部員でプロゴルファーの中村修が解説。

17番ホールの値千金のバーディで首位に立ち、最難関の最終ホール、215ヤードパー3で狙い通り花道からのアプローチを残した谷原秀人選手。運悪くディボットにはまり、2メートルオーバーしたパーパットは強烈な下りのフックラインを残しました。「入れないとダブルボギー覚悟で、あれは距離を合わせていったら入らない。入るか、入らないか、一本に絞りました」というパットをねじ込み連覇を手にしました。周りの状況を見渡せる落ち着いたプレーも印象的でしたが、4年に渡って吉田直樹コーチと作り上げてきたスウィングがいよいよ仕上がってきたと強く感じました。

「最初のころはRシャフトのドライバーに、中空の飛び系のアイアンを使うこともありました。今ではマッスルバックのアイアンで飛距離も弾道もすごくて、これだけのショットが打てるようになったら楽しいでしょう、と聞くと『別に楽しくないです』というから(笑)」(吉田直樹コーチ)

と吉田直樹コーチは振り返ります。吉田コーチの誕生日は12月5日、「昨年は最終日、今年は前日に最高の誕生日プレゼントを2年続けてもらいました」と喜びます。谷原選手のどんな点が今大会の優勝に結び付いたのかを聞くと「練習量と尽きない向上心と情熱、一切の妥協をしない」という谷原選手のゴルフに対する姿勢だと続けます。

ヨーロピアンツアーでも最後まで残って練習するのは谷原選手ともう一人だけ。3時間の居残り練習は当たり前で、どっちが最後まで練習するか変な勝負になっていたといいます。ラウンド後にそれだけの練習を続けられる体力、気力、情熱こそが谷原選手のプレーの源になっているエピソードを聞き納得しました。

実は敗れた岩田寛選手も終了後の会見で今一番やりたいことは? と聞かれると「練習」と答えていました。悔しさをバネにもっと上手くなりたいとゴルフに向き合う、これこそこそがツアープロを職業とする者の姿勢なのでしょう。では谷原選手のスウィングを見ていきましょう。

大きな改善点は、ダウンスウィングでのシャフトの傾きがシャローになった点とお尻のラインが前に出ずに前傾角がキープされるようになったことです。それによって入射角を浅くし、スピン量を安定させ、再現性の高いスウィングになっています(画像A)。

画像: 画像A 前傾角がキープされ、下りてくるシャフトの傾きが浅くなったことで、安定したスピン量、再現性の高さを手に入れた(写真は2022年のゴルフ日本シリーズJTカップ 写真/姉崎正)

画像A 前傾角がキープされ、下りてくるシャフトの傾きが浅くなったことで、安定したスピン量、再現性の高さを手に入れた(写真は2022年のゴルフ日本シリーズJTカップ 写真/姉崎正)

アドレスは左手のナックルが二つ見えるスクェアグリップで握り、肩幅が内側に入るくらいのスタンス幅とオーソドックス。テークバックで右への移動は少なくセンターからやや左に軸を取るタイプです(画像B)。

画像: 画像B オーソドックスなスクェアグリップで握り、やや広めのスタンスから、テークバックで右への移動少ないトップ(写真は2022年のゴルフ日本シリーズJTカップ 写真/姉崎正)

画像B オーソドックスなスクェアグリップで握り、やや広めのスタンスから、テークバックで右への移動少ないトップ(写真は2022年のゴルフ日本シリーズJTカップ 写真/姉崎正)

画像Cの右を見ると、切り返しで左へ踏み込んでいますが左ひざに余裕がある。縦方向の力を多くは使う動きではなく、骨盤の回転力をパワーの源に飛距離を出していることがわかります。

飽くなき研究心、向上心のせいかスウィングもすぐにアップデートしたくなってしまうそうです。そこで吉田コーチは、谷原選手にマッチするかしないか、取り入れるリスクやメリットなどを谷原選手と、話し合いながら現在のスウィングを作り上げて来ました。

画像: 画像C インパクトでも左ひざに余裕があることから縦方向の力を多くは使わず回転力の割合を多く使う(写真は2022年のゴルフ日本シリーズJTカップ 写真/姉崎正)

画像C インパクトでも左ひざに余裕があることから縦方向の力を多くは使わず回転力の割合を多く使う(写真は2022年のゴルフ日本シリーズJTカップ 写真/姉崎正)

円熟味を増すゲーム運びの上手さと効率的で再現性の高いスウィングに磨きをかけ、来年もギャラリーを沸かすプレーを見せてくれることでしょう。

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