プロのスウィングのような切り返し、いかにもパワーを生み出すという肩と腰の捻転差、あのように振るにはどうしたらいいか? そのためには腰や肩の動きをチェックするのではなく、首の部分(頸椎)と腰(腰椎)をつなぐ胸郭のコンディショニングが必要だという。
みやざわ整骨院院長・ツアーコーチ兼プロトレーナーの宮澤大助氏が提唱する「THPソリューション」。「THPソリューション」とは文字通り胸椎(Thoracic)とPelvis(骨盤)のスタックバランスを調整・解消するというものだ。
胸椎と骨盤、体幹の位置とのバランスを正常な状態に戻すことで、胸椎の緩やかなカーブが回復。椎間板の柔軟性も回復し、体のパフォーマンスを最大限発揮できるようにする。とくにパソコンや携帯電話を使う現代では、日常生活のほとんどで背中を丸め、手を体の前で使う動作が増えている。この動作で胸椎は丸まり、スタックバランスは崩れる。
胸郭はなんと136の骨でできており、じつは体の中のスプリングの役割をしている。宮澤大介氏は「高齢者が転倒したりすると『ひざが悪くなった』などと部分部分に目が行きがちですが、体のバランスを司る胸郭がおかしくなっている場合も多いのです。胸郭は日常生活でも重要でゴルファーのみなさんもぜひ気にかけてほしい」という。
ゴルフでいえば、骨盤を基準に体をひねってトップを作っているように思いがちだが、じつは背中の中心部にある胸椎の回旋によって行われている。この胸椎、胸骨、肋骨で形成される胸郭、胸郭のコンディショニングが悪いとスウィングだけでなく、通常の歩行にも影響を及ばしてしまう。
そのためTHPソリューションはプロスポーツ選手たちのコンディショニング方法だけではなく、医療としても注目されている。
ためしに胸椎のストレッチをやってみてほしい。軽く足を開き、気をつけの状態から胸を空に向けるように伸ばしてみよう。ほとんんどの人が胸椎が硬くなっているため、「首を伸ばすことによって胸を伸ばそう」とするか「腰を伸ばすことによって胸を伸ばそう」とするはずだ。すでにこの時点で胸椎が柔らかくないために首か腰に負担がかかっているのだ。
ゴルフとの関係をみても明らか。胸郭が軟らかく可動することができれば、しっかりと肩が入ったトップが作れ、切り返し後の腰と肩の捻転差も作られやすい。ここが硬くなっていると上半身と下半身が一枚の板のように動き、捻転差もなく、スウィングのスピードは上がらない。
そしてもうひとつ、この胸郭を整えることでアドレス~トップでは左サイドの側屈、インパクトからフォローにかけての右側の側屈が容易にできるようになるという。最新のスウィング理論で必要とされている側屈の動きが、胸郭のコンディショニングを整えることで正しくできるようになるのだ。
側屈は回転動作をともない、左に側屈すると体は右に回転しやすく、右に側屈すると左に回転しやすくなる。つまりきちんと側屈運動ができれば、腰は意識しなくともスウィングで正しい方向に動いてくれる。スウィングがギッタンバッコンになるという人は胸椎の軟らかさが足りず、側屈ができないため伸び上がるしかなくなっているともいえる。
当日は元プロ野球選手や女子プロゴルファーも参加。軽いデモンストレーションを交え、胸郭コンディショニングの重要性について語り合った。現在、THPソリューション理論による胸郭コンディション法は、さまざまな競技のプロ選手たちが技術の向上やケガの予防法として取り入れているという。
「脊椎を含む胸郭ストレッチが競技力の向上、怪我の予防に繋がります! これからは肩、腰だけではなく、胸郭の動きを意識してみてください」(宮澤大助氏)