自分のスウィングにあったシャフトを選ぶ際の目安にもなり、シャフトの性能を決める要素のひとつに挙げることができるキックポイント。元調子系のシャフトはシャフトの中間部よりも手元寄りにキックポイントが設定されているもののことをいいます。
一般の方が思っているよりも中間部からやや上部にキックポイントがあるものが多く、最近は元調子系シャフトはツアープロや上級者用のイメージで敬遠されやすいことから中元調子表記のシャフトが増えています。
今回はカタログにはっきりと元調子と表記しているシャフト2つ、そして中元調子&中先調子のダブルキックポイントのシャフト1つを検証したいと思います。
三菱ケミカル「TENSEI Pro White 1k」シリーズ
2021年3月発売の元調子シャフトで海外ツアーで高い評価を得ているのが「テンセイ」シリーズです。その中で三菱ケミカルの「ホワイト系」のイメージを色濃く残しているシャフトが「TENSEI Pro White 1k」です。50~80グラムまでがラインナップされていて、フレックスはS、X 、TX、50グラムと60グラム台にはRフレックスも設定されています。今回は「50S」を検証しました
テストシャフトの振動数は261cpmですが、数値のわりにダウンスイング時に手元の軟らかさを感じられます。ネーミングにもある「1kクロス材」と呼ばれる新素材カーボンを採用している影響もあるでしょう。手元にしなやかさフィーリング的には「パリッとした感じ」ではなく、「しっとりした感じ」で切り返しで自然と間が取れる感覚でダウンスウィングのスタートがしやすくスムーズに振ることができます。
プロ・アスリートゴルファー向けの元調子シャフトの手強いイメージはまったくなく動きが素直で自然に振ることができるシャフトですね。元調子らしく自然に切り返しの間が取れ、シャフトコントロールがしやすいです。
上級者は自分のタイミングで振りやすく、本来走り系のシャフトでないにも関わらず、ヘッドスピードを上げやすく感じ、振った分だけ飛距離が伸びるイメージです。
先端部分の剛性はもちろん高いのですが、適度に扱いやすく自分の意思でドローボールやフェードボールを打ち分けられコントロールしやすく感じるはずです。
いっぽうで「White 1k」はトップで間を取りたい上級者だけでなく、切り返しが安定していないゴルファーにもメリットがあります。切り返しのタイミングが取りやすいので理想的なシャフトプレーンに乗せやすく、実際にボールを打っていきながら安定した切り返しが身に付いてきます。
この場合は特に元調子シャフトの挙動を感じられるひとつ軟らかめのフレックスがオススメです。オーバースペックにしなければしなりも使えてボールもつかまえやすくなるでしょう。
三菱ケミカル「TENSEI Pro Orange 1k」シリーズ
2022年3月発売の元調子シャフトです。2019年に発売した「CK Pro Orange 」シリーズをベースに先端剛性を高める改良を加えた50~80グラム台までラインナップされたプロ、アスリートゴルファー向けのシャフトです。フレックスはS 、X 、TX50と 60グラム台にはRフレックスが設定されています。「White 1k」と同じ50Sで検証してみました。
元調子シャフトですが、こちらは前作の「CK Pro Orange」同様のカウンターバランス設計になっています。手元にはネーミング通り「1kクロス材」が採用されています。
テストシャフトの振動数は253cpmと「White 1k」よりも低いのですが、頼りなさはありません。振っていていちばん違いを感じたのはシャフトの持つ「スピード感」。シャフト全体にハリがあり、「White 1k」と比べてもトルクが絞られているのもシャフトにスピード感を感じる要因でしょう。
5Sのシャフトのバット部分の径も「White 1k」は(15.40)に対して「Orange1k」は(15.35)とわずかながら細いこともシャープな振り感に影響しているように感じます。
打点ブレにも強く、サイドスピンも少ないので、スウィングのエネルギーをしっかりボールに伝えていけますね。弾道は元調子シャフトらしく、ストレートからややフェードで安定感があります。ボールスピードも速く、バックスピン量はやや少なめですので、吹け上がることもないでしょう。
この「Orange1k」の安定性の高さは上級者にはもちろんですが、パワーはあるけどバラつきが多いという方にもメリットがあるでしょう。しっかりしたシャフトですのでオーバースペックを選んでしまうとボールは右に逃げやすく、弾道も安定せず、一気に難しく感じますのでフレックス選びは注意して下さい。
コンポジットテクノ「ファイアーエクスプレスEX-CR」
2022年3月発売のプロ・アスリートゴルファー向けの中元調子シャフト「EX・EX-V」の下の重量ポジションに位置するモデル。カタログには「中元&中先調子」と表記されていて、いわゆるダブルキックポイントのシャフトです。シャフト重量は50グラム台でフレックスはR 、SR 、S 、SX 、Xと5フレックス揃えていてメーカーのこのシャフトに対する意気込みを感じます。
テストクラブのフレックスはSをチョイスしました。ワッグルした感じはかなりしなりを感じます。ブラックを基調とした外観のイメージとはずいぶん違うイメージです。打ってみると、非常にスムーズな切り返しができました。
手元の軟らかさは切り返し時に勝手にシャフトが間を作ってくれます。非常に振りやすさを感じるシャフトです。振動数は233cpmとSフレックスとしては低めの数値で意図的に手元を軟らかく設計しているのがこのシャフトの特徴のようです。
思っているよりも先端部分のスピード感があり、実際にヘッドスピードも上がります。インパクトでボールをしっかりとフェースに押し込み、右へのミスも防ぎやすい動きですね。
これほど無理せず切り返す事ができスムーズに先端を動かせるシャフトはあまりないと思います。Sフレックスならヒッターよりもフィニッシュまで振り抜くスウィンガーのほうが合うでしょう。
手元調子系のシャフトがタイミングが取りやく感じ、飛距離も求めている方や、メーカー純正シャフトは振りやすいけど飛距離性能が少し物足りないと思っている方がリシャフトするのにオススメです。