タイトリストのニューモデル「TSR」シリーズは、前作である「TSi」シリーズのテクノロジーを踏襲しつつ、空気抵抗を減らす新たなデザイン、そして航空産業でも採用される希少なチタン素材を用いた部分肉厚設計のフェース設計「VFTフェーステクノロジー」が目玉のモデル。
VFTフェーステクノロジーは2つのタイプが用意されているが、まず初めにプロゴルファー・堀口宜篤が手に取った「TSR2」は、フェース中心部に向けて厚さを調整しオフセンターヒット時の寛容性を高めた「マルチプラトーVFTフェース」が採用されたモデル。ヘッドの最後方に固定式のウェートが搭載されていることからも寛容性が伺える仕上がりになっている。
テクノロジーだけでなく、見た目についても「前作のTSi2からかなり変わりましたね」という。
「前作のTSi2はもう少し角ばっていていかにもやさしいヘッドという感じでしたが、TSR2はTSi3寄りの洋ナシっぽさを残してスッキリとしつつ平べったさもあるヘッドで、アドレスが構えやすくなりましたね。バルジ・ロールがしっかりあってフェース面が見やすくなっていて、そういった面でもやさしさを感じます」(堀口、以下同)
ではさっそく試打を行ってもらおう。ロフト10度のヘッドに「TSP111 50」のSフレックスシャフトを組み合わせたモデルで試打を行った際の平均データと、インプレッションは以下の通りとなった。
【堀口のTSR2の試打結果】
HS45m/s キャリー232Y トータル260Y 打ち出し角11.6度 ボール初速63.7m/s スピン量1844rpm
「球が強くて、シンプルに打ちやすいというのが第一印象です。打感は柔らかめで、打音も締まった感じ。適度につかまってくれて初速もしっかり出てくれるし、高さも出ています。当たりどころによって球筋がそんなに変わってこないので、寛容性の高さ・安定感がありますね。スライスするような打ち方でも、耐えてくれて右に流れませんでした」
タイトリストというメーカーに「『玄人向けのモデルを作る』というイメージを持っているアマチュアゴルファーが少なくないと思います」と堀口は言うが「TSR2はその中でも非常にやさしいヘッドですね」と続ける。
「構えた見た目と実際に打った時の印象が、非常に意外性がありますね。TSR2はどちらかと言うとアマチュア向けの性能を持ったヘッドで幅広い方が使えると思います。寛容性がある、というふうには全然見えないスッキリとした見た目ですが、しっかりやさしいですよ。タイトリストらしい見た目を維持しながらもやさしいドライバーですね」
続いて打ったのは「TSR3」。フェース面はTSR2と異なり、CT/COR値の最大点をスイートスポットに集中させるよう円錐形にフェース厚を調整した「スピードリングVFTテクノロジー」を採用。また、ソール後方には可能な可変式ウェート「シュアフィットCGトラック」が採用されており、弾道の調整も可能となっている。
見た目については「TSR2と比べると、より洋ナシっぽさが増していますね。ディープで締まって見えますし、TSR2と比べるととくにヒール側がスッキリしていて、ちょっと小ぶりに感じられます。いかにも左には行かなそうな印象ですね」という。
ではロフト10度のヘッドに「TSP310 60」のSフレックスシャフトを組み合わせたモデルで試打を行った際の平均データと、インプレッションを見てみよう。
【堀口のTSR3の試打結果】
HS45.2m/s キャリー246.3Y トータル273Y 打ち出し角10.5度 ボール初速64.6m/s スピン量1995rpm
「TSR2と比べると、より球の強さがあって、ドローを打とうと思えばしっかり反応してくれますが、基本的には見た目からも伝わってくる通り左に行くようなイメージはありませんね。球が強いといってもすぐに球離れする感じではなく、フェースに食いついて球を押し出してくれているような感触です」
堀口によれば「TSR3はハードさが増していて上級者にとっては引っかけを恐れず振っていける打ちやすいドライバーと言えます」とのこと。
「逆に言えばちゃんと自分でつかまえる技術を持ってない方にとっては難しく、スピンが入ってスライスになりかねないとも言えますが、そこもある程度ウェートによる調整が効いて、ドロー寄りのポジションに設定すればつかまり具合はある程度TSR2に寄せられるのが良いですね。デフォルトがハードですが調整が可能なTSR3と、元からオートマチックさがあるTSR2という感じです」
続いて打ったのは「TSR4」。フェース面はTSR2と同様に寛容性を高めたマルチプラトーVFTフェースを採用。ソールの前方雄・後方の2箇所にウェートを配置しロースピン性能を高めており、3モデルの中で唯一430ccと小ぶりである点も特徴的だ。
「実際構えてみるとかなり小さく感じますね。第一印象はTSR3がコンパクトになった感じでしょうか。ディープかつ小ぶりなので、構えた段階で難しそうだなと感じますね」
ではロフト10度のヘッドに「TSP311 65」のSフレックスシャフトを組み合わせたモデルで試打を行った際の平均データと、インプレッションを見てみよう。
【堀口のTSR4の試打結果】
HS45.4m/s キャリー242.3Y トータル268Y 打ち出し角10.2度 ボール初速64.4m/s スピン量1784rpm
「TSR3よりさらに球が強いですね。打感は少し違っていて、弾く感触が入っています。スピン量が抑えられているのもあって、球の高さは低めですね。小ぶりなのも相まってTSR3よりさらにハードと言えるでしょう。僕のスウィングだと、ハイドローを打つイメージで振って中弾道のストレートボールが出ました」
TSR3よりかなりハードで「『もっと振ってください。何なら小ぶりのほうが振りやすいでしょ?』みたいなヘッドですね」と堀口は評するが、一方で小ぶりゆえのメリットもしっかりと感じられたという。
「小ぶりゆえにヘッドの操作性はすごく良いですね。球筋をコントロールしつつ強い球を打ちたい上級者にとっては扱いやすいヘッドだと言えます」
では最後に、TSRシリーズのドライバー3モデルを打ち終えた堀口に、それぞれの特徴を総括してもらった。
「まず共通して言えるのは打感の良さ。これは肉厚を調整したフェース面が良い影響を与えているのは間違いないでしょう。打感も初速性能も前作から向上していると思います。また、シャフトもヘッドごとに性能や重量帯を分けて作ってあるので、1本のクラブとしての完成度は高いと言えます。モデル別にざっくり言えば、TSR2はタイトリストの中でもやさしめな、寛容性のあるヘッド。TSR3は"ザ・タイトリスト"なウェート調整もできる洋ナシヘッド。とはいえ昔よりは若干やさしくなってるだろうなというのは感じました。そしてTSR4はロースピンで小ぶりゆえの操作性のよさがあるヘッド。こんなに振り切った性能にするかというくらいハードな仕上がりですね」
協力/PGST