かつてゴルフは経験がないと強くなれないと言われていた。しかし最近はプロテストに受かったばかりの選手が優勝を飾り、経験と実績が比例しない時代になった。
昨シーズンの国内女子ツアーは黄金世代、はざま世代、プラチナ世代、そしてその次2001年4月以降に生まれた『新世紀世代』が主役に躍り出た1年だった。
2022年シーズン前半、目覚ましい活躍を見せたのがプロ3年目21歳の新世紀世代・西郷真央。開幕戦のダイキンオーキッドレディスで優勝を飾ると出場10試合で5勝を挙げるハイペース。勝率5割は全盛期のアニカ・ソレンスタムでもなかなか達成できなかった数字だ。
しかし夏場以降失速。代わって躍進したのが同世代(01年生まれ)の山下美夢有だ。ワールドレディスチャンピオンシップでメジャー初制覇を果たすと常に上位争いに加わり、最終戦のLPGAツアーチャンピオンシップ(メジャー)を含む年間5勝を挙げ年間女王に輝いた。
最終戦は黄金世代・勝みなみとのプレーオフ決着。18番のサドンデス1ホール目ではセカンドをピン奥8メートルに乗せ、下りの難しいフックラインを読み切ってカップにねじ込みバーディを奪う。相手の勝が「感動した」と拍手を贈るほど鮮やかな勝利だった。
2億3500万円強を稼いで賞金女王に輝くとともにメルセデス・ランキング(年間女王)、平均ストローク(69.9714)、年間トップ10回数(21回)でも1位に。特に平均ストロークは日本人初の60台を達成する快挙だった。
ランキング上位に名を連ねたのは黄金世代の勝、はざま世代の稲見萌寧、プラチナ世代の西村優菜、新世紀世代の山下と西郷。こうして見ると、若い若いと思っていた黄金世代がベテランに思えてくる。
新世紀世代のさらに下、昨年プロテストに受かったばかりのルーキー・川﨑春花の優勝も話題に。03年生まれの19歳が初優勝を挙げたのは誰もがほしいメジャータイトル、日本女子プロゴルフ選手権。サンデーバック9で30をマークし大逆転勝利をおさめると本人も「信じられない」と戸惑った。
ルーキーでビッグタイトルを獲得したのが史上初なら、予選会から出場した選手が優勝したのも初。しかも生まれ育った京都で開催された大会で地元優勝を挙げたのも初。初めて尽くしの頼もしい逸材が登場した。
一方でベテランも健在。宮里藍の同級生、85年生まれの藤田さいきが大王製紙エリエールレディスで11年ぶりにツアー6勝目を挙げ、年間女王レースでトップ10(10位)、賞金ランク11位と大健闘した。
1歳下の上田桃子も序盤の富士フィルム・スタジオアリス女子オープンでツアー17勝目を挙げ、年間女王レース12位、賞金ランク10位に入り若手の壁になった。
藤田や上田がデビューした頃、黄金世代がゴルフに目覚め、宮里世代の2人の活躍に憧れ、ツアーの舞台に立つ自分をイメージしながら切磋琢磨してきた。川﨑にいたっては彼女たちが活躍し始めた当時、2~3歳のほぼ赤ちゃんだった。
川﨑が「逃げずに攻める」ゴルフをテーマに勝ち切ったように、稲見が「ピンしか狙わない」プレーではざま世代のダイヤモンドになったように、アグレッシブなプレースタイルで魅せる選手がツアーを席巻するようになった。
攻める勇気が魅せるゴルフにつながりファンの熱狂を呼ぶ。この流れは23年、さらに加速するに違いない。(第7話に続く)