これまで「エピック」「マーベリック」「ローグ」とキャッチーなネーミングで展開してきたキャロウェイの新製品は「パラダイム」となり英語では「PARADYM」と本来の「PARADIGM」からの造語になっています。しかし、”パラダイムシフト”という、これまでの常識を打ち破る転換を期待させる仕上がりになっています。
3パーツ構造で飛びとやさしさの両方を高めることに成功
発表されたのは4モデルで、スタンダードの「パラダイム」、ドローバイアスの「パラダイムX」、軽量モデルの「パラダイム マックスファスト」、ロースピンモデルの「パラダイム♦♦♦」（トリプルダイヤモンド）の4モデル。4モデルに共通するのは、鍛造チタンのフェースカップにモノコック構造のカーボンボディにバックウェートの3パーツ構成、そして1本になって軽量化されたジェイルブレイク。フォルムやウェートの配分とAIによるフェースの設計は、それぞれのモデルに持たせたキャラクターに合わせたものになっています。
キャロウェイ2023年の新製品「パラダイム」はこれまでになかった3パーツ構造で飛距離とやさしを高めたモデル（左からマックスファスト、パラダイム、パラダイムX、パラダイムトリプルダイヤモンド）
ヘッドの前方のチタンフェースとクラウンからソールまでを一体化したフェースカップにカーボンのボディ（シャーシ）をはめ込む構造は、10年以上前にフュージョンテクノロジーとしてFTシリーズで採用していましたが、カーボンの技術も進み軽量で高強度な素材を使用したことでバックウェイトと今までなかった3パーツ構成になり余剰重量の配分に改善の余地が生まれたようです。
まずはスタンダードな「パラダイム」の9度からトラックマンで計測しながら試打を開始します。フォルムはディープフェースで安心感のある460CC。ソール後方のバックウェイトは左右に移動する可変式になっているので、持ち球の傾向に合わせて設定できるようになっています。クラブのスペックはシャフトが純正のフジクラベンタスでの実測値で45.5インチ、バランスD3、306グラム。
スタンダードな「パラダイム」はスライド式のバックウェイトで持ち球に合わせて調整できる
試打して驚いたのはヘッドスピードに対する初速の割合を示すミート率の数値が1.49や1.48と総じて高かったことと方向性の良さ。ミート率が高かったことはスイートエリアの広さ、高初速エリアの広さ、そして方向性の良さは高慣性モーメントの効果だと思いますので、狙い通りの性能に仕上がっていました。打感はローグSTよりもやわらかい打音のせいもあり、チタンフェースの弾き感とやわらかさの心地いい打感です。ロフトが9度でしたので打ち出し角や最高到達点はやや低めの中弾道になりました。
「パラダイム」はヘッドスピードに対するボール初速の割合を示すミート率が高く、方向性のばらつきも少なかった
続いてドローバイアスの「パラダイムX」10.5度。投影面積が大きくややシャローに見えるのでやさしく安心感のあるフォルムです。クラブのスペックは実測値で45.5インチ、バランスD3、重量303グラムと「パラダイム」とほぼ同じでした。
ドローバイアスの「パラダイムX」はシャローで投影面積が大きく安心感のあるフォルム
クラブパス（軌道）0.3度インサイドアウトとほぼストレートな軌道できれいなドローを描きました。左へ引っかけるほどのドローバイアスにはなっていない印象です。ロフトが10.5度であったこともあり、打ち出し角14.9度、最高到達点33.4ヤードと高く高弾道。2409rpmと適度なスピン量でミート率も1.49と高く、飛距離性能とドローバイアスの効いた「パラダイムX」のキャラクターが見て取れます。
「パラダイムX」の試打データから打ち出し角が高く高弾道、ほぼストレートな軌道でも軽いドローを描きつかまりの良さが見て取れる
続いて軽量モデルの「パラダイム マックスファスト」は、ネック調整機能を持たせずに278グラム（45.5インチ、実測値）という仕上がり。こちらも投影面積が大きくて安心感のある形状です。
「パラダイム マックスファスト」は278グラム（実測値）と軽量なモデル
ヘッドスピードを42m/s程度で試打したデータを見ると、やはりスマッシュファクターの高さが目につきます。初速が速く14.4度という打ち出し角も高いので、シニアや女性ゴルファーにとってやさしく飛ばせるクラブに仕上がっていました。
軽量モデルの「パラダイム マックスファスト」は、ミート率の高さはそのままに高弾道軽量でつかまの良い特性を持たせている
最後に「パラダイム♦♦♦」（トリプルダイヤモンド）の9度。450CCで厚みのあるディープフェースなので小ぶりに見えます。縦方向の打点のズレにも強そうです。前作では「ローグST MAX LS」の低スピンモデルに、トリプルダイヤモンドやトリプルダイヤモンドSといった限定モデルが存在しましたが、パラダイムではトリプルダイヤモンドとしてラインナップされています。
「パラダイムトリプルダイヤモンド」は小ぶりなディープフェースでハードヒッターが叩けるフォルム
トリプルダイヤモンドの9度のデータを見ると、低スピン、中弾道のキャラクターが見て取れます。年明けのPGAツアーで優勝したジョン・ラームはトリプルダイヤモンド10.5度、ザンダー・シャウフェレも同じモデルを投入していましたので、コントロール性と飛距離性能の両立とローグSTからも違和感なく移行できたということでしょう。
「パラダイム トリプルダイヤモンド」の9度はミート率の高さは共通していて、中弾道で低スピンで球が強い
4モデルそれぞれ特徴的なキャラクターを持たせていますが、試打した感想はスタンダードな「パラダイム」の飛距離と方向性の良さが光っていました。小ぶりなトリプルダイヤモンドは10.5度を再試打してみようと思います。
まったく新しい3パーツ構造を採用し、これまでのキャロウェイのどのモデルよりも飛距離とやさしさを高めたモデルだという「パラダイム」。試打してみる価値は多いにありそうです。
取材協力／4プラスフィッティングラボ
