日体大時代には、日本オープンでローアマ獲得、amebaツアーでのアマチュア優勝と、これまで大器の片りんを見せていましたが、プロ転向した22シーズンに2勝を挙げ賞金ランクも9位と躍進した河本力選手。なんといっても315.74ヤード(1位)という飛距離が大きな魅力。さらに試合を重ねるごとにみるみる成長し、出場7試合目でいきなり初優勝を挙げると5試合後に2勝目とツアープロとして大きく飛躍したシーズンとなりました。
その要因は二つあると考えます。一つはアイアンショットやアプローチ、パッティングの技術がツアーのセッティングのなかで向上したこと、二つ目はゴルフというゲームの運び方。風やライ、ピン位置やスコアの状況、気持ちや体のコンディションといった状況を判断しながらプレーの流れをつかむツアープロとして必要なスキルをしっかりと身につけたところにあるのではないでしょうか。
筋力や柔軟性といったアスリートとしての体作りが充実している河本選手。実際には足裏の圧力や圧力の方向を計測する機器でなければ正確な判断はできないのですが、河本選手のスウィングを水平方向、回転力、縦方向といった飛距離の源となる3つの力をイメージしながら見ていきましょう。
3つの力は、どのゴルファーでも利用していますが、その割合は人それぞれ。水平方向の力を大きく使い左への移動が大きい選手もいますし、移動は少なく回転力を多く使う選手も存在します。河本選手は3つの力のバランスがよく取れていながら縦方向の力も強く使えているようです。
まず、テークバックで右に移動した重心を左方向に移す水平方向の力ですが、この水平方向の力のピークはトップ付近であることが理想的だと解析器の進化でわかってきています。
河本選手の水平方向の移動は少なく、大きく左右に揺さぶって力を得るのではなく、この後の回転力、縦方向の力を多く使っているようです。それぞれの力のピークタイミングがマッチすることで力の流れがスムーズに移行しヘッドスピードを上げることにつながっていきます。
続いて左腕が地面と平行になる位置が回転力のピークを迎える理想的なタイミングとなります。画像Bを見ると上半身と下半身の捻転差がはっきりと見て取れますが、これは水平方向から回転力へと力の流れがスムーズに移行していることの表れ。体がまだ伸び上がらずに次の縦方向の力を使って上半身から腕、クラブへと伝達しヘッドを加速させる準備が整っています。
手元を下に振り下ろすために、左ひざを伸ばすように地面を踏み込む縦方向の力のピークはシャフトが地面と平行になる位置が理想的。画像Cでは、ひざを伸ばしながら地面を踏み込んでいます。この後、左足のかかとが浮きますが踏み込む力のピークはちょうどシャフトと地面が平行になる位置になっているはずです。
そして柔軟性と躍動感があって、すべてのエネルギーがヘッドに集約し無駄なくボールに伝達されているようなインパクトへとつながっています。このオフのトレーニングの効果もあり軽く振っても300オーバーの飛距離を出せるようになっているようです。
昨年のZOZOチャンピオンシップではPGAツアー選手に負けない飛距離を目の前で見せてくれましたし、海外参戦も視野に入れていることでしょう。飛距離だけでなく、アプローチやパットといった繊細なタッチも持ち合わせている河本選手の2023年に大いに注目していきましょう。
写真/岡沢裕行